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ミッドウェイ
ミッドウェイ
- 著: 森村 誠一

戦争へと突き進む時局に押され、憧れの女性への思慕も個人の夢も捨て去り、戦闘機乗りに身を投じた日米の若者たち。爆撃を受け火だるまになる空母、次々と飛び立つ戦闘機。はからずも同じ女性の影を追っていたとも知らずに、降旗とロバート、それぞれの想いがミッドウェイの空に交錯する……。太平洋戦争の分岐点となった激戦ミッドウェイ海戦に正面から取り組んだ、著者渾身の戦記小説。
詩人になりたかった降旗圭は、戦時へと突き進む時局に背中を押されるように、江田島の海軍兵学校に進んだ。軍人の世を憎み、彼に詩の話をしてくれた憧れの女性弓枝は、特高に捕らわれ死を選んだ。海軍将校への世間の憧れとは裏腹に、鉄拳で鋳型にはめられる日々。降旗はそれに耐え抜き、零戦パイロットになるべく霞ヶ浦航空隊へ進む。
サンフランシスコのロバート・ウッドは、日本人女性の寛子に心奪われる。だが、二人を引き裂くように、寛子の一家は日本に帰国することになった。弓枝と面影の似た寛子と、降旗は休暇中の横浜で出会い、出撃前の束の間、二人は恋仲となった。そして寛子を自家用機に載せたことのあるロバートもまた、戦闘機乗りへの道を選んでいた。
ハワイ真珠湾攻撃以降、戦局を優勢にすすめていた日本海軍は、レーダー網のない虚を衝かれて、本土空襲を浴びる。日本の空軍力を目の当たりにし、アメリカは戦艦から空母への転換を急ぎ進めていた。初の空母同士の対決となった珊瑚海海戦を経て、日本海軍はアメリカ太平洋艦隊を叩くため、ミッドウェイ沖に空母四隻を進めた。
だが序盤の戦いで蒼龍、加賀、赤城を次々に失い、空母は飛龍を残すのみとなった日本海軍は、手負いの空母ヨークタウンに狙いを定め、零戦や爆撃機を発進させるのだった。
飛龍の零戦部隊には降旗が、ヨークタウンの戦闘機にはロバートが生き残っていた。同じ女性と出会った互いのことなど知らない日米の若い戦闘機乗りは、両軍死力を尽くした戦闘の空に身を投じるほかなかった……。
太平洋戦争の戦火の中に散っていった若者たちの夢。迫真の戦記小説。
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目次
プロローグ
艶麗な拒否
復讐受験
継続した転向
逆行する潮流
青春の聖域
過保護の手当
最後の夜景
許されざる卒業
よみがえらざる夜景
瓜二つの女神
死を予感した詩
天への投身
要視察の裏切り
若者の義務
ぜいたくは素敵
幻影との交わり
美しい凶器
実体のない性媒
面目のための時間
操縦桿を握った鬼
私生児の勝利
播種された妻
晒された女神
火矢の一本
死装への転換
火のカーテン
浮かぶ熔鉱炉
免刑なき死刑台
国の破片
ただ一編の詩
終章
主要参考文献
書誌情報
紙版
発売日
2014年07月15日
ISBN
9784062778732
判型
A6
価格
定価:979円(本体890円)
ページ数
640ページ
シリーズ
講談社文庫
電子版
発売日
2014年09月12日
JDCN
0627787300100011000S
初出
1991年6月に文藝春秋より「ミッドウェイ――血と海の伝説」として単行本で刊行。1994年3月文春文庫(題名「ミッドウェイ―血と海の伝説」)。1998年8月ハルキ文庫(題名「血と海の伝説―ミッドウェイ」)。2000年12月角川文庫(題名「ミッドウェイ」)。