大清帝国と中華の混迷

大清帝国と中華の混迷

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「漢字と儒学」は中国を統一できなかった
乾隆帝の巨大な遺産が今もこの国を悩ませている

北東アジアの雄・ヌルハチ率いる満洲人の国家は、長城を越えて漢人を圧倒し、未曾有の大版図を実現した。「中華の文明」ではなく、チベット仏教に支えられた、輝ける「内陸アジアの帝国」が抱え込んだ苦悩とは。「近代東アジア」と「中華民族」はいかに創り出されたか。

■満洲の雄・ヌルハチが草創し、辛亥革命に倒れた大帝国の輝きと崩壊!
現在の中華人民共和国の広大な国土は、大清帝国に由来しています。では、この大領域を「北方の異民族」がいかにして手に入れ、維持したのでしょうか。また、漢人たちはこの「異民族支配」にどう対応したのでしょうか。康熙帝・雍正帝・乾隆帝の最盛期から、アヘン戦争・日清戦争をへて、ラストエンペラー・溥儀、西太后、李鴻章、孫文らが登場する清末まで、栄光と苦闘の270年を描きます。

■「巨大な中国」を実現したのは、「中華文明」ではなく、チベット仏教だった!
清は「東アジアの帝国」であるより先に、「内陸アジアの帝国」でした。そして、彼らがチベットやモンゴル、さらに今日の新疆ウイグル自治区を治めた原理は、「漢字と儒学」に代表される「中華文明」や「中華思想(華夷思想)」ではなかったのです。従来の中国史や現代中国論では見落とされがちだった、いまの中国が抱える「最大の矛盾」を、歴史的に解き明かします。

■「万里長城」「天安門」が象徴する歴史の真実とは? 「現代中国」を見る眼が変わる!
台湾、琉球、朝鮮、そして日本――。清代末期の混乱のなかで「東アジア」の国々は何を共有し、何を争ってきたのでしょうか。そもそも「東アジア」という地域イメージは、共有することができるのでしょうか。春節に賑わう横浜中華街を皮切りに、旧満洲、承徳、敦煌、ラサ、ソウル、台北など、各地を訪ね歩いた著者・平野氏は「清末の諸課題は、未だに解決されていない」と述べています。


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目次

序章 「東アジア」を疑う
第1章 華夷思想から明帝国へ
第2章 内陸アジアの帝国
第3章 盛世の闇
第4章 さまよえる儒学者と聖なる武力
第5章 円明園の黙示録
第6章 春帆楼への茨の道
終章 未完の清末新政

書誌情報

紙版

発売日

2007年10月18日

ISBN

9784062807173

判型

四六変型

価格

定価:2,530円(本体2,300円)

ページ数

390ページ

シリーズ

興亡の世界史

著者紹介