「アボジ」を踏む 小田実短篇集

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「アボジ」を踏む 小田実短篇集

アボジヲフムオダマコトタンペンシュウ

講談社文芸文庫

時代の最前線で行動し書いた著者の半世紀を刻する珠玉短篇集

「ぼくは生(な)まで帰る」――食うために朝鮮から移民、激しい肉体労働の60年を送った「アボジ」の望みは、生まの遺体で故郷の済州島に還ることだった。著者自身の義父を通して歴史の軛に喘ぎながら逞しく生きる人間像を見事に彫琢した表題作(川端康成文学賞受賞)他6篇。戦争の世紀の只中にあって、常に「殺される側」の庶民の目と感性で行動し、書き、自ら時代の語り部たらんとした小田実の40年に亘る珠玉短篇集。

川村湊
『オモニ太平記』や『「アボジ」を踏む』を読んだ時、初めて小説家オダ・マコトの本領を見たような気がした。そこには、オダさんの妻の両親である在日朝鮮人の「オモニ」と「アボジ」の姿が、ユーモアとペーソスをまじえて、とても生き生きと描かれていたからである。(略)日本で散々に“踏み付け”にされてきた「アボジ」を、日本人のオダさんが踏む。この笑えないギャグ的光景を想像するたびに、ぼくはオダさんが、「ひどい国」の国民として、「アボジ」の国と人に、真剣に和解と贖罪を求めていたと考えるのである。――<「解説」より>


書誌情報

紙版

発売日

2008年08月10日

ISBN

9784062900218

判型

A6

価格

定価:1,540円(本体1,400円)

ページ数

312ページ

シリーズ

講談社文芸文庫

初出

『「アボジ」を踏む 小田実短篇集』(1998年3月、講談社刊)を底本とし、振りがなを適宜増減した。

収録作品

  • 作品名

    「アボジ」を踏む

    初出

    『群像』1996年10月号

  • 作品名

    「三千軍兵」の墓

    初出

    『群像』1997年10月号

  • 作品名

    河のほとりで

    初出

    『社会文学』1987年創刊号

  • 作品名

    43号線の将軍

    初出

    『文学的立場』1980年創刊号

  • 作品名

    テンノウヘイカよ、走れ

    初出

    『群像』1974年2月号

  • 作品名

    折れた剣

    初出

    『文芸』1963年12月号

  • 作品名

    ある登攀

    初出

    『三田文学』1957年4月号

著者紹介

既刊・関連作品一覧