水の女

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水の女

ミズノオンナ

講談社文芸文庫

無頼の男の荒ぶる性と、流浪の女の哀しき性

獣のように性を貪りつくそうとする男たちに対し、ある女は、自らの過去を封印し、その性に溺れ、またある女は、儚い運命のなかにそれを溶かし込む。またある女は、男の性を弄ぶ。紀伊を舞台に、土俗的世界に生きる男女の性愛を真正面から描いた傑作短篇5作。緊密な弾力のある文体で、性の陰翳と人間の内部の闇を描破した中上文学の極北。

前田塁
彼は46歳で亡くなるまで、無数に男主体の作品を書いているし(略)その多くは、いま読めばほとんど牧歌的なほど男性的な粗暴さに満たされても見える。しかし、よく見れば、『水の女』の5篇ですでに、女のように犯される男、女のようにおののく男の姿が、そこここに書き込まれてもいるのだから(略)のちに「蘭の崇高」の同性愛的な物語に至るまで続いてゆく中上健次の一面はここから始まっているのだし、中上健次の作品が持つ「豊かさ」がそうした女性性によっても/女性性があることによってこそ支えられているのだということを、『水の女』は発見させてくれるのだった。――<「解説」より>

※本書は、集英社刊『中上健次全集2』(1995年9月)を底本としました。


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書誌情報

紙版

発売日

2010年07月10日

ISBN

9784062900935

判型

A6

価格

定価:1,760円(本体1,600円)

ページ数

224ページ

シリーズ

講談社文芸文庫

初出

集英社刊「中上健次全集2」(1995年9月)を底本としたが、作品の配列は、作品社刊「水の女」(1979年3月)に拠った。

収録作品

  • 作品名

    赫髪

    初出

    『文藝』1978年5月

  • 作品名

    水の女

    初出

    『文學界』1978年11月

  • 作品名

    かげろう

    初出

    『群像』1979年1月

  • 作品名

    鷹を飼う家

    初出

    『すばる』1977年2月(原題「連作長篇1 古座 紀伊物語」)

  • 作品名

    初出

    『すばる』1977年4月(原題「連作長篇2 那智 紀伊物語」)

著者紹介

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