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野鴨
ノガモ
- 著: 庄野 潤三

はかなく取りとめない日常の中に現代の至福を描き出す長篇小説。家族を愛し人生を慈しむーー丘の上に住む作家一家。息子たちは高校生・大学生になり、嫁いだ娘も赤ん坊を背負ってしばしばやってくる。ある時から作家は机の前に視点を定め、外に向いては木、花、野鳥など身近な自然の日々の移ろいを、内では、家族に生起する悲喜交々の小事件を、揺るぎない観察眼と無限の愛情を以て、時の流れの中に描き留めた。名作『夕べの雲』『絵合せ』に続く充実期の作家が、大いなる実験精神で取り組んだ長篇。
◎庭に来る鳥や、庭の樹木から書き起こされる章が多いが、人の心が自然現象のなかに融け、照らし出されているように感じられる。八章には、「四十雀が飛び立ったあと、水盤の水に映った空が揺れている。」という小景描写があった。水面が揺れているのではなく空が揺れている。こんなところを読むと、今、見ているような気がする。昭和の小説には、このような豊かさがあった。<小池昌代「解説」より>
ⒸNatsuko Imamura
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書誌情報
紙版
発売日
2011年02月11日
ISBN
9784062901123
判型
A6
価格
定価:1,540円(本体1,400円)
ページ数
320ページ
シリーズ
講談社文芸文庫
電子版
発売日
2021年02月12日
JDCN
06A0000000000200655R
初出
「庄野潤三全集」第9巻(1974年3月 講談社刊)を底本として使用した。明らかな誤記誤植であると思われる箇所はただし、振り仮名を多少増減するなどしたが、原則として底本に従った。