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忠臣蔵 もう一つの歴史感覚
チュウシングラモウヒトツノレキシカンカク
- 著: 渡辺 保

日本人の心の中に「大石内蔵助」という名は一つの男の理想像として刻み込まれている。しかし、このイメージは、実は歴史上の実像とは隔たりがある。それでは、「忠臣蔵」という共同幻想をつくったのは、本当はだれなのか。そして、この壮大なフィクションは、なぜこれほど日本人に愛され続け、『仮名手本忠臣蔵』はどのようにして歌舞伎最大の古典となったのか。明晰な構成と文体で鮮やかに描き出す、第一人者による意欲作。
誰がつくったのか。
なぜ愛されるのか。
日本人の心のうちに、「大石内蔵助」という名は一つの男の理想像として刻み込まれている。このイメージは、実は歴史上の人物像とは隔たりがある。それでは「忠臣蔵」という共同幻想をつくったのは、いったいだれなのか。そしてこの壮大なフィクションは、どのようにして歌舞伎最大の古典となり、時代を超えて一つの美意識を完成させるに至ったのか。
一つの美学が完成した。その流れをみれば、三人の名優が発明したことは、それぞれの時代におけるそれぞれのかたちであって、実は一つのものの表現にしかすぎないということがわかる。(中略)三人の名優の芸の系譜は、どんな時代にも、日本人の感性が一つのものを求めていたこと、少なくとも歌舞伎の世界の中では、一つの感性がこうしてとぎすまされ、それが一人の男の肖像として結実していったことを示している。――<本書より>
※本書の原本は、1981年、白水社より刊行されました。
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目次
元禄十四年三月十四日<口の暦>
近松門左衛門の手紙
文盲の吾妻三八
もう一人の大石内蔵助
竹田一族の興亡
元禄十五年十二月十四日<中の暦>
中村松江の恋
尾上菊五郎の性根
偏癡気先生の視点
粋と肚
元禄十六年二月四日<切の暦>
書誌情報
紙版
発売日
2013年11月12日
ISBN
9784062922036
判型
A6
価格
定価:1,265円(本体1,150円)
通巻番号
2203
ページ数
368ページ
シリーズ
講談社学術文庫
電子版
発売日
2013年12月20日
JDCN
0629220300100011000T
初出
原本は、1981年、白水社より刊行されたもの。解説は中公文庫版に付けられたものを収録。付録は「舞台という神話」(1994年 新潮社刊)から収録、初出は収録作品参照。
収録作品
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作品名初出
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作品名
“元禄”は遥かに、だが……
初出
『聖教新聞』1982年1月26日
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作品名
忠臣蔵伝承の担い手たち
初出
『国文學』1986年12月号
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作品名
私たちにとって『忠臣蔵』とは何か
初出
『序破急』1986年12月号
著者紹介
1936年東京生まれ。演劇評論家。慶應義塾大学経済学部卒。東宝演劇部企画室を経て慶應義塾大学、東京大学、淑徳大学等で教鞭を執り、放送大学名誉教授。おもな著書に『女形の運命』『娘道成寺『四代目市川団十郎』『黙阿弥の明治維新』『江戸演劇史』『明治演劇史』など。