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西洋中世奇譚集成 魔術師マーリン
セイヨウチュウセイキタンシュウセイマジュツシマーリン
- 著・訳: ロベール・ド・ボロン ,
- 訳・解説: 横山 安由美

悪魔と処女の子マーリンは、キリスト教の力で悪魔由来の邪悪さが消え、不思議な予言力を持つ。サクソン人の襲撃を受けるブリテンを守る王族三代コンスタン→ユテル→アーサーを導き、最終的にアーサー王の戴冠を成功させる。本書の物語の特徴は、なんといっても聖杯伝説とアーサー王伝説のマリアージュです。また本書では異なるふたつの結末が収録されています。本邦初訳の中世ロマンが読みやすい訳と解説付きで登場!
中世で最も有名な魔法使いマーリンの、13世紀フランス語原典の本邦初訳です。本書はラテン語で書かれたジェフリー・オヴ・モンマスの『ブリタニア列王史』を独自のかたちで発展させ、マーリンの誕生からアーサー王の戴冠までを描く一大スペクタクルです。
母親が睡眠中に夢魔に犯されて生まれたマーリンは、悪魔から過去の知恵を、神から未来を見通す力を授かり、全治全能の予言者として歴代のブリトン人の王を助け、異民族の侵入からブリタニアを護ります。マーリンが変身の魔法を駆使した、アーサー誕生の秘密に始まり、「この剣を抜く者は王になるだろう」と書かれた聖剣をうら若きアーサーが抜く感動的なクライマックスまで、アーサー王伝説にとって重要な多くのモチーフが含まれています。
本書の最大の特徴は、聖杯伝説をアーサー王物語に組みこんだことです。本物の聖血を含んだ最後の晩餐の容器がヨーロッパに伝わり、選ばれた騎士たちに守護されてゆく――このようなマーリンのお膳立ては、中世における聖杯物語の大流行のきっかけとなりました。
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目次
訳者まえがき 凡例 訳者解説
1 マーリンの誕生
悪魔たちの謀/郷紳一家の災厄/郷紳の三人娘/惑わしの女/ブレーズの助言/姉妹の諍いと姉の妊娠/姉の告白/姉の妊娠/ブレーズの判事への提案/マーリンの誕生/神童マーリン/裁かれる母親/マーリン、母を弁護する/判事長の母親の秘密/救われたマーリンの母親/ブレーズの本
2 ヴェルティジエ王
幼王モワーヌ/モワーヌ暗殺とヴェルティジエの即位/倒壊する塔/占星術師が見たもの/父なし子/マーリンに驚く使者たち/ブレーズと聖杯の書/皮を買う農民/子どもの葬列/ヴェルティジエと使者たち/マーリンとヴェルティジエ/塔の謎解き/二匹の竜/竜についての解き明かし
3 対アンジス戦
王子たちの帰還/あやしい木こりの男/獣飼いとアンジスの死の知らせ/マーリンとパンドラゴン王の会見/アンジスの死の説明/兄弟の再会/手紙運びの小姓/かつがれたユテル/兄弟を助けるマーリン
4 パンドラゴン王
サクソン人との停戦/マーリンを試す側近/三通りの死因/予言の実現/予言の書とサクソン人の再上陸/ソールズベリー決戦の前夜/空飛ぶ竜とパンドラゴンの死
5 ユテル王
ユテルパンドラゴン王の即位とソールズベリーの巨石/第三の卓の提案/円卓と五十人の騎士たち/危険な空席/マーリンの叱責
6 ユテルとイジェルヌ
公爵夫人イジェルヌへの恋/ユテルの愛の苦悩/イジェルヌを説得するユルファン/イジェルヌへの金杯/公爵への告白/公爵への帰還命令/公爵への宣戦布告/国王軍の来襲/マーリン召還の助言/老人に化けたマーリン/中風病みに化けたマーリン/マーリンと王の約束/マーリンの妙案/王の変身とイジェルヌの懐胎/公爵の非業の死/償いの相談/ユルファンの和平案/停戦のための駆け引き/公爵側との対峙/ユルファンの計略/ユテルとイジェルヌの結婚/子ども引渡しの提案/アントルの説得/赤ん坊受け渡しの手筈/アーサーの誕生/ユテル軍の大敗/ユテルに残す言葉/ユテルの死
7 アーサー王の誕生
王位継承問題/成長したアーサー/クリスマスのミサ/剣の刺さった石段/大司教の説教/アーサー、剣を抜く/養い親の告白/アーサーの再挑戦/戴冠を引き延ばす諸卿/アーサーの叡智/アーサーの寛大さ/アーサーの戴冠(マーリンの帰還)
書誌情報
紙版
発売日
2015年07月11日
ISBN
9784062923040
判型
A6
価格
定価:1,221円(本体1,110円)
通巻番号
2304
ページ数
288ページ
シリーズ
講談社学術文庫
電子版
発売日
2015年07月24日
JDCN
0629230400100011000A
初出
翻訳にはRobert de Boron, Merlin: Roman du XIIIe siecle, Alexandre Micha(ed.), TLF, Droz, 1980(ミシャ版)を底本として使用し、そのほかの刊本や各種の現代フランス語訳を参照しました。
著者紹介
12世紀後半~13世紀初期のフランスの作家。『聖杯由来の物語』『メルラン(マーリン)』を著した。
訳・解説: 横山 安由美(ヨコヤマ アユミ)
1964年生まれ。東京大学文学部卒業、同大学院人文科学研究科博士課程修了、博士(文学)。現在、フェリス女学院大学国際交流学部教授。著書に、『中世アーサー王物語群におけるアリマタヤのヨセフ像の形成--フランスの聖杯物語』、『はじめて学ぶフランス文学史』『フランス文化55のキーワード』(共著)、共訳書に『アベラールとエロイーズ 愛の往復書簡』などがある。