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免疫力を強くする 最新科学が語るワクチンと免疫のしくみ
メンエキリョクヲツヨクスルサイシンカガクガカタルワクチントメンエキノシクミ
- 著: 宮坂 昌之

免疫学の第一人者が教える、感染予防のために「私たちができること」
新型コロナウイルス大流行の今こそ「知識のワクチン」を!
テレビや新聞、インターネットには、毎日のように「免疫力を高める」とか「がんを免疫で治す」といった情報が流れているが、免疫学的に見ると、その大部分は科学的エビデンスが欠けている。残念なことに、こうした怪しげな情報に、多くの人たちが惑わされて、かえって健康を損ない、ときには寿命を縮めているケースさえある。
その最たるものが、ワクチンに対する過剰な忌避感情・恐怖症だ。医学的にもっともエビデンスのある「免疫力増強法」は、ワクチン接種である。ところが、ワクチンの副作用を過剰に煽る人たちがいて、彼らの多くが医師や医学博士という肩書を持つことから、その主張はもっともらしく聞こえ、それなりの支持を獲得している。しかし、彼らの主張を子細に見てみると、ワクチンや免疫機構に関する初歩的な事実が見落とされ、しばしば医学的に誤った主張がなされている。こうした情報に翻弄されると、健康被害を受けかねない。もちろん、ワクチンは万能ではなく、効果が不十分である場合や、副作用が出ることもある。しかし、そのようなことを考慮しても、多くの感染症ではワクチン接種は有効で、ほとんどの人に利益をもたらす。
一方で、巷に氾濫している免疫力強化をうたう健康食品の多くには暗示効果以上のものはなく、摂取してもからだの免疫力はほとんど変わらない。健康食品は精神安定剤以上のものではない。免疫系全体の能力を上げるためには、むしろ、血流やリンパ流量をよくすることのほうが役に立つ(本書では、その科学的エビデンスや具体的な方法について、解説している)。そして、なるべくストレスをなくすことだ。「信じるものは救われる」と言うが、健康食品や民間療法の多くは「信じても救われない」。そのようなものに頼るよりも、からだの働き方を科学的に理解して、それに伴ったものの考え方、生活の仕方を実践することが賢明である。
本書では、近年注目を集めている「がん免疫療法」についても取り上げている。これまで抗がん剤以外に打つ手がなかった「がん」に対して、「がんワクチン」が使われ、効果をあげつつある。加えて、さらに最近、免疫チェックポイント療法、CAR-T療法など、劇的な効果をもたらす「がん免疫療法」が注目されている。
このほか、本書では、そもそも免疫力を科学的に測定することは可能なのか? また免疫力を科学的に高める方法は存在するのか? がんや高血圧などの病気をワクチンで治療することが可能なのか、など数多くの疑問に対して、科学的に誠実に解説した。
Ⓒ宮坂昌之/定岡恵
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目次
第1章 病原体の侵入・拡散を防ぐからだのしくみ
第2章 ワクチンとはなにか
第3章 ワクチンを接種する前に知っておきたいこと
第4章 感染症別ーワクチンの現状と問題点
第5章 免疫記憶とはなにか?
第6章 がん免疫療法は「不治の病」を克服できるのか?
第7章 「夢の新型ワクチン」研究最前線
第8章 「免疫力を強くする」のウソ・ホント
書誌情報
紙版
発売日
2019年12月18日
ISBN
9784065181775
判型
新書
価格
定価:1,210円(本体1,100円)
通巻番号
2119
ページ数
288ページ
シリーズ
ブルーバックス
電子版
発売日
2019年12月18日
JDCN
06A0000000000178406E
著者紹介
大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授。一九四七年長野県生まれ。京都大学医学部卒業、オーストラリア国立大学大学院博士課程修了。金沢医科大学血液免疫内科、スイス・バーゼル免疫学研究所、東京都臨床医学総合研究所を経て、大阪大学医学部教授、同・医学研究科教授を歴任。医学博士・PhD。著書に『分子生物学・免疫学キーワード辞典』(医学書院、共著)、『標準免疫学』(医学書院、共著)、ブルーバックス『免疫と「病」の科学 万病のもと「慢性炎症」とは何か』など。