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激震
ゲキシン
- 著: 西村 健

1995年、大地が裂けた。時代が震えた。
阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件と未曾有の災厄が相次いだ一年、戦後五十年かけてこの国が築き上げたあらゆる秩序が崩れ去っていく……。
昭和史の闇を抉った傑作『地の底のヤマ』の著者が描き出す平成の奈落。
雑誌記者として奔走した自身の経験が生んだ渾身の力作長編。
年明け早々に阪神地方を襲った大地震に衝撃を受け、被災地に駆けつけたヴィジュアル月刊誌「Sight」記者の古毛は、その凄まじい惨状に言葉を失う。神戸でも火災被害の激しかった長田地区では焼け跡に佇む若い女と遭遇。夕方の光を背にこちらを振り向いたときの眼はかつて戦場で出会った少年兵とそっくりだった。果たして彼女は何者なのか?
「何やってんだろうな、俺達」加納が自嘲ぎみに呟いた。(略)「世間の耳目を引く話題に引っ張り回されて、取材取材に駆け回る。それで終わってみりゃぁ、前に何やってたかも記憶が薄れてる始末だ。(略)世間、てぇお釈迦様の掌で踊らされてる、孫悟空かよ」
「元々、報道なんてそんなものだったのかも知れませんけども」古毛は言った。「特におかしくなって来たのが、あのバブルの辺りからだったような気はします」
「あれで、日本が溜め込んで来たあれこれの矛盾が一気に噴き出して来た感じだな。戦後、営々と築いて来たこの国の神話が次々と崩壊してる、ってところかな」
――本文より
ⒸKen Nishimura
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書誌情報
紙版
発売日
2021年03月01日
ISBN
9784065183496
判型
四六変型
価格
定価:2,090円(本体1,900円)
ページ数
418ページ
著者紹介
1965年福岡県福岡市生まれ。6歳より同県大牟田市で育つ。東京大学工学部卒業。労働省(現・厚生労働省)に入省後、フリーライターになる。1996年に『ビンゴ』で作家デビュー。その後、ノンフィクションやエンタテインメント小説を次々と発表する。 2005年『劫火』、2010年『残火』で日本冒険小説協会大賞を受賞。2011年『地の底のヤマ』で第30回日本冒険小説協会大賞、翌年、同作で第33回吉川英治文学新人賞、2014年『ヤマの疾風』で第16回大藪春彦賞を受賞する。著書に『光陰の刃』『目撃』、「博多探偵シリーズ」など。