越境の中国史 南からみた衝突と融合の三〇〇年

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越境の中国史 南からみた衝突と融合の三〇〇年

エッキョウノチュウゴクシミナミカラミタショウトツトユウゴウノサンビャクネン

講談社選書メチエ

香港の民主化運動への禁圧、台湾への軍事的圧力――。現在の中国が見せる、特に南部への強硬な姿勢には、どのような歴史的背景があるのだろうか。中国史のフロンティア=華南地方の周辺民族と移民活動に焦点を当て、南から中国史を見直す。
中国の歴史は従来、黄河流域に展開した古代王朝の興亡史や、騎馬遊牧民が打ち立てた大帝国など、「北から動く」ものとして捉えられてきた。しかし、清代末期、広州などの港町を窓口とした近代ヨーロッパとの出会いをきっかけに、新しい時代が始まる。洪秀全の太平天国、孫文の辛亥革命など、社会変革の大きな動きは南から起こり、中国史上初めて「南からの風が吹いた」のである。その「風」を起こしたのは、漢民族にヤオ族・チワン族やミャオ族、さらに客家など様々な人々が移動と定住を繰り返す「越境のエネルギー」だった。
世界のチャイナタウンではなぜ広東語が話され、福建省出身者が多いのか。周辺民族は、漢民族のもたらす「文明」にどのように抵抗し、あるいは同化したのか。辺境でこそ過剰になる科挙への情熱や、キリスト教や儒教と軋轢を起こす秘密結社、漢民族から日本人そして国民党と、波状的な支配を受ける台湾原住民など、中国社会の多様性と流動性を史料と現地調査から明らかにし、そこで懸命に生きてきた人々の姿を見つめる。

目次
序章 中国史のフロンティア=華南
第一章 動き出した人々――福建・広東の移民活動
第二章 越境する漢人移民――広西と台湾への入植
第三章 辺境の科挙熱――中国文明と向き合う
第四章 周辺民族の抵抗と漢文化――流入する移民と秘密結社
第五章 太平天国を生んだ村で――移民社会のリーダーたち
第六章 械闘と動乱の時代――つくり直される境界
終章 越境してやまない人々――海外移住と新たな統合
あとがき
参考文献
索引


ⒸHideaki Kikuchi

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目次

序章 中国史のフロンティア=華南
第一章 動き出した人々――福建・広東の移民活動
1 福建と広東――華人のふるさと
2 中国の人口爆発と移民活動
第二章 越境する漢人移民――広西と台湾への入植
1 瘴気の地・広西 
2 台湾・うるわしの島
3 移民の要因とネットワーク
4 「ワンセック」という行動様式
第三章 辺境の科挙熱――中国文明と向き合う
1 土司の周辺民族統治と改土帰流
2 辺境での科挙受験と儒教
3 あるチワン族一家の「漢化」
第四章 周辺民族の抵抗と漢文化――流入する移民と秘密結社
1 創り出された周辺民族の「貧困」
2 「漢人化」する周辺民族
3 台湾原住民の世界と日本の統治
第五章 太平天国を生んだ村で――移民社会のリーダーたち
1 移民宗族の台頭と競争
2 新興エリートの「自治」
3 下位集団の上昇戦略――造反か、「軍功」か
第六章 械闘と動乱の時代――つくり直される境界
1 広西の来土械闘
2 広東の土客械闘
3 台湾の分類械闘
終章 越境してやまない人々――海外移住と新たな統合
1 動乱が生んだ移民――アメリカ・日本・台湾
2 華南の移民史と中国の未来

あとがき
参考文献
索引

書誌情報

紙版

発売日

2022年12月15日

ISBN

9784065302750

判型

四六

価格

定価:1,980円(本体1,800円)

通巻番号

776

ページ数

272ページ

シリーズ

講談社選書メチエ

電子版

発売日

2022年12月14日

JDCN

06A0000000000581302Q

著者紹介

著: 菊池 秀明(キクチ ヒデアキ)

1961年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。東京大学大学院修了。文学博士。中部大学国際関係学部講師・助教授を経て、現在、国際基督教大学教授。主な著書に『中国の歴史・第10巻 ラストエンペラーと近代中国』(講談社)、『広西移民社会と太平天国』(風響社)、『太平天国にみる異文化受容』(山川出版社)、『清代中国南部の社会変容と太平天国』『金田から南京へ─―太平天国初期史研究』『北伐と西征─―太平天国前期史研究』(汲古書院)、『太平天国─―皇帝なき中国の挫折』(岩波新書)など。

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