
マイページに作品情報をお届け!
日本語の勝利/アイデンティティーズ
ニホンゴノショウリアイデンティティーズ
- 著: リービ 英雄

「日本語の勝利」は著者が『星条旗の聞こえない部屋』で野間文芸新人賞受賞決定直後、世に問われた最初のエッセイ集。
日本語という言語や「新宿」という場所との関わり、文学との向き合いが様々な切り口で描かれており、興味深い。
それから4年半を経て2冊目のエッセイ集「アイデンティティーズ」が刊行される。そこでは日本とアメリカとの往還だけでなく、中国というもうひとつの大陸への探訪が始まったことが記される。そこで目にする中国人や中国語はこれまでになかった姿であり、読者の固定観念を揺るがす。
文学をそして人間の営みをつねに複眼的に捉え、生き生きとした日本語で描写する著者、リービ英雄のエッセイ群は東西冷戦後の世界の枠組みがさらに大きな変化を生じ始めていると見られる2020年代の今こそ、深く受け取ることのできる貴重な文学の表現なのである。
ⒸHideo Levy
- 前巻
- 次巻
オンライン書店で購入する
目次
日本語の勝利
東京を歩く男
1
日本語の勝利
セイレンの笑い声、三島の声
猿股の西洋人
もう一つの国
なぜ日本語で書くのか
もう一つの「在日」
アメリカ、日本文学、中上健次
アジアの伝唱者、オリュウノオバ
「在」と「バイ」と、カタギリの目
「翻訳」された天皇崩御
李良枝からの電話
「つまらない」時代の、決してつまらなくない六人の作家
本格的「移民文学」の誕生
2
日韓もう一つの文化ショック
ソウル 英語のない大都会
「日韓ショック」の原点
鉄馬が行きたい、走りたい
韓国は六〇年代の日本ではなかった
モスクワ ささやきの都への旅
アメリカの埼玉県
3
木造の青春
部屋から部屋へ
ターミナル
悪魔のサカナ
カリフォルニアの清少納言
読書ノート『ユダヤ人』
読書ノート『フローベール全集第八巻』
読書ノート『万葉集・巻五』
鎖国の国ブータン
「歴史」の後はコンプレックス
What is Shinjuku
混血児のごとく
あとがき
アイデンティティーズ
1
東北の出会い
「there」のないカリフォルニア
「文学者」の国に、ぼくがいる
万葉青年の告白
プリンストンの豊かな淋しさ
江戸間八畳の中
久しぶりの北京語
「莫説!」
満州で聞いたコトバ
高級マンション、叫び声
最後のエッセイ
2
ニューヨーク――もうひとつの島国
ワシントンの少年――クリントンを追う
新宿とは何か
顔と表情――上海で言われたこと
書誌情報
紙版
発売日
2023年04月12日
ISBN
9784065309629
判型
A6
価格
定価:2,640円(本体2,400円)
ページ数
432ページ
シリーズ
講談社文芸文庫
電子版
発売日
2023年04月11日
JDCN
06A0000000000609861H
初出
本書は『日本語の勝利』(1992年11月 講談社刊)、『アイデンティティーズ』(1997年5月 講談社刊)を底本としました。
著者紹介
リービ英雄(1950・11・29~)小説家。アメリカ合衆国カリフォルニア州生まれ。少年時代を台湾、香港で過ごす。プリンストン大学とスタンフォード大学で日本文学の教鞭を執り、『万葉集』の英訳により全米図書賞を受賞。1989年から日本に定住。1987年、「群像」に「星条旗の聞えない部屋」を発表し小説家としてデビュー。1992年に作品集『星条旗の聞こえない部屋』で野間文芸新人賞を受賞し、西洋人で初の日本文学作家として注目を浴びる。2005年『千々にくだけて』で大佛次郎賞、2009年『仮の水』で伊藤整文学賞 、2016年『模範郷』で読売文学賞、2021年『天路』で野間文芸賞を受賞。法政大学名誉教授。