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新古事記
シンコジキ
- 著: 村田 喜代子

第二次大戦日米開戦後のアメリカ。オッペンハイマー、ノイマン、ボーア、フェルミ、若手のファインマン……。太平洋戦争の最中、世界と隔絶したニューメキシコの大地に錚々たる科学者たちが続々と集まってくる。
咸臨丸の船員だった日本人の血を受け継ぐ日系三世のアデラは両親にさえ物理学者の夫の仕事の内容を教えられず、住所を知らせることもできない。秘密裏に進む夫たちの原爆開発、施設内の犬と人間の出産ラッシュ。それと知らず家事と子育てに明け暮れる学者の妻たちの平穏な日々。
「新しい世界は神じゃなく、人の子がつくる」――”われは死なり 世界の破壊者となれり”
その小さな神たちが行き場を探して右往左往している。辺りは火火火火火火、赤いものがボウボウと襲いかかる。
世界は戦さの火だらけだ。火火火火火火が荒れ狂う。小さい神々は蟹のように火火火火火火に追われて逃げ惑う。
山の神も火火火火火火、川の神も火火火火火火に包まれ、樹木の神も立ったまま火火火火火火に焼け焦げていく。
焼け滅ぼされていく。
Ⓒkiyoko murata
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書誌情報
紙版
発売日
2023年08月10日
ISBN
9784065326831
判型
四六
価格
定価:2,420円(本体2,200円)
ページ数
352ページ
電子版
発売日
2023年08月09日
JDCN
06A0000000000683686G
初出
(「新「古事記」 an impossible story」)「群像」連載 2021年9月号~2023年4月号(2022年5月号、8月号、10月号、12月号休載)。本書は単行本化にあたり加筆修整を行いました。
著者紹介
1945年、福岡県北九州市生まれ。87年、「鍋の中」で第97回芥川賞を受賞。90年、『白い山』で女流文学賞、97年、『蟹女』で紫式部文学賞、98年、「望潮」で川端康成文学賞、99年、『龍秘御天歌』で芸術選奨文部大臣賞、2010年、『故郷のわが家』で野間文芸賞を受賞。