
最後の言葉
サイゴノコトバセンジョウニノコサレタニジュウヨンマンジノトドカナカッタテガミ
戦争のこと、家族のこと、命のこと、この本を読んで考えてみてください。たとえ涙が、止まらなくなっても。
妻に、子どもに、恋人に宛てた愛の手記――。60年の時を越えて、日本軍将兵の膨大な言葉が発見された。NHKハイビジョンスペシャル『最後の言葉~作家・重松清が見つめた戦争~』で話題を呼んだ、感動ドキュメンタリー。
わが妻、静江へ。
何も言い残すことはない。君と結婚して十七年がたった。幸せな思い出に満ちた十七年だった。来世への思い出でこれ以上のものはないだろう。君に何とか恩返しをしたかった。感謝の気持ちでいっぱいだ。私のぶんも子どもたちを可愛がってほしい。今後、日本は本当に困難な時期を迎えるだろう。日本は、あらゆる勇気を奮い起こして困難を乗り越えねばならない。父親を亡くした息子たちのよい相談相手になってやり、彼らを強く、廉直な日本人に育ててくれ。健、正、康へ。強い正直な日本人になってくれ。将来の日本を担ってほしい。兄弟どうし、互いに協力しあい、全力を尽くしてお母さんを助けてあげてくれ。これまで過ごした年月に対し、君になんと礼を言えばいいのかわからない。体を大切にして、末永く充実した人生を送ってほしい。
和美より
――(サイパン戦従軍将校の日記、最終ページから)
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書誌情報
紙版
発売日
2004年07月17日
ISBN
9784062122122
判型
四六
価格
定価:1,760円(本体1,600円)
ページ数
282ページ