
「別れ」の深層心理
ワカレノシンソウシンリ

会ウガ別レノ始メ……といい、サヨナラダケガ人生……という。生きていくうえで避けることのできない別れは、望んだものであれ強いられたものであれ、心を大きく揺り動かす。その悲しくも豊かさに満ちたドラマの内面を探る。
「別れ」の意識――別れが「別れ」として強く意識されるということは、どういうことだろうか。それは、その人物や動物、その場所や物が強く愛情を寄せていた対象だからに他ならない。もし愛情を寄せていなければ、物理的に別れたとしても、決して「別れ」として意識されないだろう。つまり、別れとは愛する対象を失うことである。その強さは対象に寄せる愛着の強さに比例するのである。別れは、受動的であれ、能動的であれ、主体の体験として起こる。しかし、その体験が必ずしも意識的とは限らない。本人が気づかぬままに起こって、後に心に大きな影響を及ぼすこともある。たとえば、しばしば親子間や夫婦間で見られるが、同じ屋根の下で暮らしているのに、いつの間にか心が離れ離れになってしまっているような関係は、別れが本人の気づかない間に起こっているといえるだろう。――本書より
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目次
●「別れ」への注目と現代
●発達過程に見る「別れ」とその展開
誕生という最初の「別れ」
乳幼児期に見る「別れ」の現象
幼年期の「別れ」体験と自我の芽生え
少年期の「別れ」体験と自己形成
青年期の「別れ」と心の彷徨
成人期以降の「別れ」と心の病
●別れの心理とメカニズム
別れの心理過程
別れの種類とその心理
別れと防衛のメカニズム
書誌情報
紙版
発売日
1993年04月16日
ISBN
9784061491434
判型
新書
価格
定価:704円(本体640円)
通巻番号
1143
ページ数
192ページ
シリーズ
講談社現代新書