
禅と精神医学
ゼントセイシンイガク

瑩山禅師の『坐禅用心記』には、禅門のなかに潜む心の健康法の秘密と、悟りにいたる人間の心が、明らかな科学の言葉で語られている。禅瞑想のもつ科学性を病める心の治療に用いることこそ、仏の説く慈悲ではないかという考えのもとに、著者は精神医学の立場から脳波学的研究によりこれを証明しようとした。本書はまさに現代日本の医学と禅との結実の書といえる。国際的にも高く評価された注目の書。
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目次
1
1.坐禅とは何か
2.「身心脱落」――執着しない心
3.「會て名を知らず」――仏性とは何か
4.「全身独露」――生と死
5.「虚空終に内外無し」――心の防衛機制
6.「唯心と唯身と異と同とを説かず」――心とからだ
7.「身露れて相分る」――仏心にある現代的知性
8.「心は海水の如く、身は波浪の如し」
――生命感情回復のあがき
9.「光明終に円照す」――健康な不安、プラスのストレス
10.「三昧王三昧」――三昧の心理
11.「家に還って穏坐するに似たり」――無意識の世界
12.「坐禅は是れ、己は明らむるなり」――悟りと無意識
13.「心思うこと無く、身事とすること無かるべし」
――心身の健康法
14.「黙照体験」の科学――坐禅と脳波
15.「須らく善悪の思を休すべし」――強迫観念
2
16.「妄縁尽くる時、妄心随って滅す」――脱俗の心
17.「般若の智慧」――知恵と知的生活
18.「浄心の因縁たりと雖も……」
――能動的注意集中と受動的注意集中
19.「調心の至要」――快楽追求本能
20.「調身の要術」――他力本願の健康法
21.「皆ものに仏性あり」――一人よがりの倨傲
22.「調息の法」――息の構造と心とからだと
23.「念息不調の病」――悟りは幻覚(=禅病)ではない
24.「心を鼻端丹田に安ず」――禅病の予防
25.「多き時は皆乱心の因縁なり」――禅病にかかりやすいタイプ
26.「散心乱念」――ハート・ショック
27.「探道の心」――甘くない「安楽の法門」
28.「きょう慢我慢法慢」――知的我利我利亡者
29.「只管打坐」――「煩脳を断じ」の逆説
30.「説くこと莫れ」――坐禅の科学性
31.「意尽き理窮る処」――真の現実性とは
32.「聖凡の格式を超え迷悟の性
書誌情報
紙版
発売日
1990年05月07日
ISBN
9784061589254
判型
A6
価格
定価:990円(本体900円)
通巻番号
925
ページ数
290ページ
シリーズ
講談社学術文庫
著者紹介
装丁: 蟹江 征治(カニエ セイジ)