
主君「押込」の構造
シュクンオシコメノコウゾウキンセイダイミョウトカシンダン
- 著: 笠谷 和比古

近世大名家の君臣秩序と御家
悪主・暴君に対抗する強制的隠居という実力行使
「御身持宜しからず御慎しみあるべし」――主君の悪政・不行跡に対して家臣団が執る最後の手段「押込(おしこめ)」。君臣間の上下秩序が絶対の近世武家社会において、遊蕩・大酒あるいは専制に走る主君は、家臣にとって憂慮すべき存在であった。御家の永遠性への忠義からなされる主君強制隠居の内談、実行、幕府側の処置の論理など、主君廃立の隠された慣行を明らかにする。
それは家老・重臣たちが主君を幽閉し、強制的に隠居――廃位させる行為である。それ故にこれはまた「押込隠居」とも呼ばれていた。(中略)主君「押込」は家臣団の手で、主君を強制的に隠居させるものであるから、その本性において主君廃立行為としての性格をもち、近世の国制を考察するにはやはり避けて通れぬ問題である。――<「はしがき」より>
- 前巻
- 次巻
目次
第1章 阿波蜂須賀家の君臣抗争
第1節 蜂須賀家の政治体制
第2節 諫言
第3節 呪詛
第4節 押込
第5節 幕命
第2章 諸大名家の「押込」事件
第1節 宝暦年間の三つの「押込」事件
第2節 主君「押込」慣行の形成
第3章 「押込」慣行の構造
第1節 主君「押込」慣行の形式
第2節 主君「押込」慣行と近世的秩序
第4章 近世の国制
第1節 主従制と身分階層制
第2節 近世官僚制と政治的意思決定の構造
第3節 近世の封禄制と地方知行制
第4節 君臣秩序とその思想
書誌情報
紙版
発売日
2006年10月12日
ISBN
9784061597853
判型
A6
価格
定価:1,100円(本体1,000円)
通巻番号
1785
ページ数
320ページ
シリーズ
講談社学術文庫
初出
1988年、平凡社より刊行。