
竈神と厠神 異界と此の世の境
カマドガミトカワヤガミイカイトコノヨノサカイ
- 著: 飯島 吉晴

かつて日本家屋の暗い領域に存在した イエの神の民俗学
土間の柱に異形の面を取り付け、火難よけや家の守護神として祀られた竃神(かまどがみ)。偶像化はされず、精霊的な存在として河童譚や出産の習俗などと深く結びついた厠神(かわやがみ)。日本家屋の暗所に祀られたこれらの神々は、生死や新旧を転換する強力な霊威をもち、此の世と霊界との出入口に宿った。昔話や儀礼、禁忌など伝承を博捜し、家つきの神の意味と役割を探る。
本書は、竃神、厠神、納戸神といった民家の私的領域に祀られている屋内神を中心に考察したもので、(略)日本の民俗社会では、生命や富、豊穣といったものが一体どこからやってくると考えてきたのかという世界観や宇宙観の問題を、屋内神を事例に論じたものともいうことができる。その背景にある基本的な考え方の一つが(略)民家の奥、裏、土間、天井などの私的な暗い領域には神秘的な神霊が宿っているという伝統的な日本人の信仰であった。――<「学術文庫版あとがき」より>
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目次
1
第1章 竈神の象徴性――生と死の媒介者
第2章 金工と錬金術
第3章 家と火――竈・イロリの火を中心に
第4章 産屋の火――火の媒介機能を中心に
第5章 イロリをめぐる習俗――裸回りの深層
2
第1章 厠考――異界としての厠
第2章 厠と化粧――変身のフォークロア
第3章 黄金と糞便のフォークロア
3
第1章 オタナサマ信仰の周辺――東北地方の家の神信仰を中心に
第2章 オタナサマの性格
第3章 年徳神と疱瘡神
4
第1章 庚申信仰試論――転換の論理としての庚申
第2章 橋の民族
第3章 柿の民族
第4章 狐の民族――「狐に化かされた話」を中心に
第5章 狐火とミカワリ婆さん
書誌情報
紙版
発売日
2007年09月12日
ISBN
9784061598379
判型
A6
価格
定価:1,155円(本体1,050円)
通巻番号
1837
ページ数
336ページ
シリーズ
講談社学術文庫
初出
原本:本書の原本は1986年3月、人文書院より刊行。
収録作品
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作品名初出
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作品名
竈神の象徴性
初出
『民族学研究』42巻4号、1978年
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作品名
金工と錬金術
初出
『常民文化研究』5号、1981年
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作品名
家と火
初出
『歴史公論』119号、1985年10月号
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作品名
産屋の火
初出
『西郊民俗』100号、1982年
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作品名
イロリをめぐる習俗
初出
新稿
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作品名
厠考
初出
『現代宗教』4号、1981年、春秋社
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作品名
厠と化粧
初出
『月刊百科』251号、1983年9月号、平凡社
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作品名
黄金と糞便のフォークロア
初出
『月刊百科』224号、1981年6月号、平凡社
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作品名
オタナサマ信仰の周辺
初出
『農村文化論集』三集、1983年
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作品名
オタナサマの性格
初出
『置賜の民俗』9号、1979年
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作品名
年徳神と疱瘡神
初出
『秘境奥三面』(『蒲原』別冊)1978年
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作品名
庚申信仰試論
初出
千葉徳爾編『日本民俗風土論』所収、1980年、弘文堂
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作品名
橋の民俗
初出
『自然と文化』1984年夏季号(原題:村境と橋)
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作品名
柿の民俗
初出
『採集と飼育』43巻10号、1981年(原題:行事・民間伝承にみる柿)
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作品名
狐の民俗
初出
『歴史手帖』12巻5号、1984年、名著出版(原題:現代妖怪話考)
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作品名
狐火とミカワリ婆さん
初出
『自然と文化』1984年秋季号(原題:関東の妖怪)