この三つのもの

この三つのもの

コノミッツノモノ

講談社文芸文庫

まことの恋と友情と智恵の石

主人公・赤木清吉は、友人・北村荘一郎にないがしろにされている夫人・お八重に同情するうちに、永遠の恋に陥ちてしまう――。かつてスキャンダラスな「細君譲渡事件」として世に知られた佐藤春夫と谷崎潤一郎および千代夫人との三角関係を題材に、自らの愛憎の葛藤を吐露した未完の表題作と、「一情景」「僕らの結婚」を収録。10年におよぶ愛の軌跡の全貌を辿る。作品は、愛を貫く文学者の誠実を示すものとなった。

千葉俊二
時間的にはわずか4日間の出来事が記されているのみであるが、その場面々々に応じて過去の回想や述懐が挟まれ、時間が重層的に組み合わされる。あたかも絵の具を丹念に何度も塗りかさねるようにして画いた油絵の大作をみるように、描写の密度は細かく、登場人物の人間関係や心理の交錯が、それこそバルザック風の本格的なリアリズムの手法によって重厚に描きだされる。――<「解説」より>


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書誌情報

紙版

発売日

2007年10月12日

ISBN

9784061984936

判型

A6

価格

定価:1,540円(本体1,400円)

ページ数

352ページ

シリーズ

講談社文芸文庫

初出

底本:講談社刊『佐藤春夫全集』第2、6、11巻(’66年5月、’67年9月、’69年5月)を底本とし、新漢字、新かな遣いに改め、ふりがなを適宜増減した。

著者紹介