死を視ること帰するがごとし

死を視ること帰するがごとし

シヲミルコトキスルガゴトシ

死がこわくなくなり、気持が楽になる“心の書”
死は“別れ”にあらず。自然のふところへ還る、出発のときである。
――死後や来世に、もうひとつの生があることを……
日本人は忘れていないか――

自分の遺体がカマで焼かれて、骨になっている。やがて粉々にくだかれ、ごくわずかな肉親や知人によって遠い海の彼方に、あるいは山奥の樹木の根元にまかれている。そういう光景を想像してみよう。私の骨灰をまいている人びとが、たんに別れを告げているようには、とてもみえないのである。むしろ私の最後の大切なものを、自然のふところに返しているようにみえる。私の骨灰を、もともとあった場所にそっと戻しているように思うのである。まかれている当の私にしても、山や海の自然のなかに融けこんで、生きのこっている人びとと地つづきのところに横たわっている感じなのだ。水の流れにそって、自分を送ってくれた人びとの足元に漂っているといってもよい。――本書より


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書誌情報

紙版

発売日

1995年04月11日

ISBN

9784062075817

判型

四六

価格

定価:1,495円(本体1,359円)

ページ数

236ページ

著者紹介