ちぎり屋

ちぎり屋

チギリヤ

文芸(単行本)

繁栄にわく小樽の街の片隅にあるおもんの店で、1杯の酒とともに語られる「問わず語り」。

北の街の小さな居酒屋「ちぎり屋」では、今日もまた、わけあり者たちが、心に溜めた想いを語っていく。

『駆け落ち者』
ちぎり屋は、おもんといとしい男との思い出のよすが。今は、おもん1人が店を切り盛りしている。

『残んの月』
「板場、借りるぜ」その男は、手慰みとは思えない技で、次々と料理を作っていった……。

『冬ごもり』
着流しに半纏を羽織った男は、宇三郎と名乗った。『北の譽』に居候しているという。

『忘れ潮』
使いから戻ったタセの顔を見て、おもんは尖った声を引っ込めた。唇まで色を失っていた。

『差し柳』
タセの噂は、おもんの耳にも届いていた。勝手口の戸を開けた途端、タセの怒鳴り声がおもんの耳を打った。

『焦がれ舟』
ぬる燗の酒を干しながら、近江屋は、十六年以上も前の、ある恋を話し始めた。

『凍て蝶』
運河にかかる橋に佇み、おもんは関東大震災で焼け野原になった故郷・東京を思った。

『橋懸り』
おもんは耳を澄まして、そっと目を閉じた。瞼の裏にもやはり雪は降っていた。


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書誌情報

紙版

発売日

2002年08月28日

ISBN

9784062112772

判型

四六

価格

定価:1,980円(本体1,800円)

ページ数

288ページ

初出

備考参照

著者紹介