愛でもない青春でもない旅立たない

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愛でもない青春でもない旅立たない

アイデモナイセイシュンデモナイタビダタナイ

文芸(単行本)

青春とか愛とか、さして中身のない言葉はいらない。誰かに愛されているのか、誰を愛しているのかだってわからない。旅立つこともない。僕は毎日自分のふつうの日常を散歩しているだけ。だから、歩くための道はあったほうがいい。時間も空も、足も。誰かのために歩いているわけじゃないけど。日常はそれなりに幸福で、それなりに不幸だし。今もどこかで誰かが死んでいて、どこかで誰かが生まれている。そしてすべての人は生を死に続けている。それにいちいち涙は流さない。ただ食べて、出して、オイシイとかマズイとか言いながら。僕は何者でここはいったいどこなのか?まあどうでもいいんだけど。リアルなことはあるとは思うけど。リアルな……たぶん、この小説は。僕らの時代の現実は、そう簡単には……。

この小説は、恋愛小説かもしれないし、純文学かもしれない。そうでないかもしれない。ここにあるのはいわゆる青春ではない、しかし、まぎれもなく青春小説だ。


書誌情報

紙版

発売日

2005年09月18日

ISBN

9784062130745

判型

四六

価格

定価:1,430円(本体1,300円)

ページ数

146ページ

初出

『群像』’05年8月号

著者紹介

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