
電子あり
津本陽 前田利家
ツモトヨウマエダトシイエ
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朱武者バサラ利家の華麗なる運命! 利家は右腋に敵の槍先を受け、血が鎧直垂を濡らしていた。彼は、槍を杖に信長本陣に戻ると首級を近侍に差しだす。信長のかたわらにいた柴田勝家が、大声で告げた。「殿、利家が手柄をたててござりまするぞ。なにとぞ勘当をご宥免してやって下されませ」采配を手に、使い番に口早に下知をしていた信長はふりかえり、利家をにらむと叫んだ。「ならぬ。そやつは目通り叶わぬ」利家は信長の言葉を聞くなり槍をひっさげ、敵勢にむかい駈け戻ってゆく。勝家が信長にいう。「利家は手を負うておりまするに、追い返さば斬り死にいたしまするでや」──本文から