
小林秀雄全文芸時評集
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知性のドラマを批評へとたかめ近代を拓いた新しい文芸時評 懸賞評論「様々なる意匠」二席入選の翌年(昭和五年)、「アシルと亀の子」で、文芸時評家として文壇に登場した小林秀雄。当時隆盛を極めたマルクス主義文学の観念性を衝き、また心理小説、私小説、行動主義等、あらゆる文学潮流にも与することなく、孤高を持し、本質的で独創的な論を展開。そこには個々の作品を論じつつも、批評という行為それ自体を問う、<近代批評>誕生のドラマがあった。 小林秀雄 文学という形はその影をもっている。瞬時も同じ格好をしていない人間の心という影をもっている。作品という死物に、命を与える人間の心は、社会の鏡でもなければ、又、社会は人間の心の鏡でもないのである。文学に関する困難は、ただこの影の世界を覗くにある。――<本書収録「文学と風潮」より> ※本集は、掲載紙誌において「文芸時評」「文芸月評」と銘打たれた作品を集成したものです。底本は、新潮社刊『小林秀雄全作品』1~5(二〇〇二年十月~二〇〇三年二月)としました。
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小林秀雄全文芸時評集 下
発売日:2011年08月12日
時代を超えた若き「文芸時評集」 文学と時代を語り文芸時評の行く末をも見定めた小林秀雄 昭和九年の後半から、文芸時評から身を退く昭和十六年八月までの二十七篇を収録。時代は日中戦争へ、さらには太平洋戦争へと緊迫するなか、マルクス主義壊滅後の中心的批評家として、いかなる文芸時評が可能であったか。戦争目的の是非を論ずることの無意味さをいだきつつ、「当麻」「無常といふ事」「西行」など一連の古典論へと沈潜していくその後の小林を予感させる、貴重な一冊。 山城むつみ どんなに緻密な解釈であれ、解釈は原文に限りなく漸近することができるだけで、決してこれに追いつくことはできない、いわんや追い越すことなどありえない。これは昭和十年以降、小林が自分に課した「批評的創作」の命法にほかならない。――<「解説」より> ※本集は、掲載紙誌において、「文芸時評」「文芸月評」と銘打たれた作品を集成したものです。底本は、新潮社刊『小林秀雄全作品』5~14(二〇〇三年二月~二〇〇三年十一月)としました。