立志・苦学・出世-受験生の社会史
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立志・苦学・出世-受験生の社会史

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受験生はどこから来たのか。怠惰・快楽を悪徳とし、刻苦勉励、蛍雪読書する禁欲的生活世界は勉強立身の物語に支えられる。「苦しい受験生」を生んだ近代日本の心性をさぐる。 努力とガンバリズムの時間と空間──受験準備の世界とは努力と勤勉の世界である。苦労しない怠け者は受験生ではない。だから受験滑稽譚にでてくるトリックスターの名前は「怠雄」(註3)である。快楽は努力と勤勉の世界を汚すものだから徹底的に排除される。快楽につながるものは「誘惑」として危険視された。受験生は手淫を異常なほど悩んだ。そしてかれらはそれを記憶力の減退や頭が悪くなるという恐怖で苦悩した。しかしそれは、精気を放出することによる気の衰弱への恐怖である。と同時に、この種の「快楽」は努力と勤勉の受験空間の「反」世界だったからである。その意味で、「受験生の手記」の健吉が絶望してから、売春街にむかうというものはきわめて象徴的な行為である。「快楽」はこの空間にふさわしくない。──本書より

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立志・苦学・出世 受験生の社会史
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立志・苦学・出世 受験生の社会史

発売日:2015年09月11日

明治初期「勉強立身」の言説が高まり、学校の序列化も進むと、青少年の上昇移動への野心は新たな「受験的生活世界」を生み出す。怠惰・快楽を悪徳とし、受験雑誌に煽られて刻苦勉励する受験生の禁欲的生活世界を支えた物語とは何なのか。受験のモダンと、昭和四〇年代以降の受験のポストモダンを解読。

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