ストレンジ・デイズ

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ストレンジデイズ

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村上龍最新長編小説。 絶望から狂気へ向かっていた反町は深夜のコンビニで天才的な演技力を持つ無名の少女に出会う。彼女は巨大なトラックを運転し、血管の中に虫を飼っているのだと言った。 二人の、「ストレンジデイズ」(奇妙な日々)が始まる。果てのないロールプレイの、ゲームではなく、現実の日々……。 ●春は嫌いだ。と反町公三は思った。  毛虫に刺されたのもオフクロが十二指腸潰瘍になって入院したのも懸賞で当たったペレのサイン入りサッカーボールを失くしたのも自転車で坂道を下っていて犬の死骸にハンドルをとられ白菜畑まで飛んで転がり目の下に傷をつくったのも上級生に体育館裏に呼び出され殴られた上にオヤジに買って貰ったばかりのシェーファーの万年筆をとられたのもたて続けに受験に失敗したのもハシシで警察にパクられたのも初めてうつ病といううっとうしい病気になったのも季節は全部春だった。そして、今も春だ。窓ガラスの向こうに雨が降っているのが見える。桜の花びらが何枚かガラスに貼り付いていて反町公三の家の庭には桜の木がないからどこか他の家か並木のある表の通りから飛んできたものだろう。本の形をしたカミュのコニャックを飲みながら、反町公三は窓ガラスに映る自分の顔を眺め、春に起こったイヤな出来事の一つ一つを思い出して、それでも今のこの状況が最低なのではないかと考えた。――本文より

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ストレンジ・デイズ
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ストレンジ・デイズ

発売日:2000年08月10日

私の中には等身大の虫が棲む! 雨の夜、深夜のコンビニで出会った反町とジュンコの奇妙な日々……。 絶望から狂気へと向かっていた反町は深夜のコンビニで天才的な演技力をもつ巨大トラックのドライバー・ジュンコに出会う。ゆるぎない眼差しをもつ彼女は血管の中にサナダ虫のような等身大の異生体を宿しているという。そして、2人の奇妙な生活が始まった──。現代社会の病理を予見する村上龍の傑作長編!!

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