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時の鳥籠
トキノトリカゴ
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来世紀小説の方向を示す超絶の問題作品! 初対面のはずの少女を見て女は思った。(私はこの子がもうじき死ぬのを知っている)と。そのまま女は意識を失い、救急病棟に運び込まれた。女は何を知っている? これは、とても静かだ。鳴り物入りで打ち上げて、惨めに萎(しぼ)んでしまう物語が多い近頃、これは珍しい。お騒ぎして喧しい子供ほど、気がついたら疲れて眠ってしまう。そこには、微笑ましい安心があるだけだ。しかし、浦賀和宏の作品は、恥ずかしがっている子供のように、ドアの隙間から、じっとこちらを覗いている。その目は、静かで、そして、冷たい。その子は、これからどうするのか……、と緊張する読者だけが、後半に静かな戦慄を拾い、そこに、若く敏捷な感性を目撃するだろう。――森博嗣