手もちの時間
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手もちの時間

テモチノジカン

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●暮しを見つめる最新随筆集68篇 過ぎた時の折々の想いと懐しい風景 手もちの時間を彩るあれこれ それにしても、昔は寒かった。母の手にはつま切れがきれ、私の耳や手には霜やけがたえなかった。夜廻りの拍子木がカチ、カチ、カチカチと音を刻んで近付いてくる。家の角から横町に向って、火の用心と声を掛けて又、遠退いてゆく。しみじみ外の寒さが思われる。刺子の半纏を羽織っても拍子木を持つ手はつめたかろう。寒さが寂しさに感じられるときであった。──本文より

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手もちの時間
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手もちの時間

発売日:2002年11月15日

美しい日本語で読む、暮らしのなかの愉しみ。手紙や着物など日々の事ごと、露伴・文の思い出をいきいきと綴る。なつかしい人の絵手紙。下戸の好きな酒の肴。道端でよく会う老トラ猫。青木玉は、なによりも生活の巧者である。日々をていねいに暮らすなかで見出される、小さいけれどもかけがえのないことごとを、祖父・幸田露伴、母・幸田文と過ごした小石川の家の3代の思い出とともに、みずみずしく綴るエッセイ。(講談社文庫)

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