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大陸の細道
タイリクノホソミチ
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M農地開発公社嘱託として満州に赴いた木川正介。喘息と神経痛をかかえ、戦争末期の酷寒の中で、友情と酒を味方に人生の闘いをはじめる。庶民生活の中「小さくて大きな真実」。“日本の親爺”木山捷平が、暖かく、飄逸味溢れる絶妙の語りくちで、満州での体験を私小説世界に結晶させた。芸術選奨受賞作。
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最新刊情報
大陸の細道
発売日:2011年03月11日
講談社文芸文庫スタンダード004(講談社文芸文庫スタンダードは、時代の原基としての存在感をたたえ、今なお輝きを放つ作品を精選した新装版です。) 日本の冬の服装でいきなり満洲にとび込んで来た正介を、満洲の空気は、薄みにつけ込んで、先ず彼の胸のあたりから牙をたてて来たのだ。理由はともかく、最初猛烈な咳が五分間もつづいて、今にも息が切れそうになった。そして焼火箸でも突っこむように胸が疼いて来た時には、正介は自分の命も今夜かぎりかと思った。 すでに日本の敗色は濃厚な昭和十九年暮れ、M農地開発公社嘱託として極寒の満洲に赴いた木川正介は慣れない土地で喘息と神経痛の持病に苦しんでいた。さらに、中立を破り突如参戦したソ連軍を迎え撃つため四十二歳にして軍に召集されてしまう。 世渡り下手な中年作家が生き残りを賭け闘う姿をあたたかく飄逸味あふれる描写で綴った、私小説の傑作。 敗色濃い戦争末期 酷寒の満洲へ渡った木川正介 様々な理不尽に諧謔で挑む文土―― 著者渾身の傑作ユーモア長篇