
転形期と思考
テンケイキトシコウ
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中野重治、椎名麟三、吉本隆明、福本和夫、萩原朔太郎……。内部の論理を社会の現実と拮抗させうる場所はどこにあるか? 期待の俊英の長編評論。 中野重治、椎名麟三、吉本隆明、福本和夫、萩原朔太郎…… 内部の論理を社会の現実と拮抗させうる場所はどこにあるか 期待の俊英の長編評論 フォイエルバッハに関するテーゼにおいてマルクスは唯物論の、観照(理論)から活動(実践)への、受動(情念)から能動(行動)への、説明から変更への転回を定式化しているが、唯物論のこのマルクス的転回には、たとえば椎名麟三が死をめぐる倫理的葛藤(ペシミズム)の末たどりついたような「たたかうユーモア」が必要なのだ。それなしには、唯物論はいつまでも「世界」を即物的に解釈しつづけるだけだろう。そこからは「世界」を「変える」実践は出てこない。「政治的な社会的な諸問題に対してほんとうにたたかって生きて行くということ」が出てこない。「コラムニスト」でありマテリアリストであるには、認識論上の切断ではなく、椎名が「ユーモア」と呼ぶ倫理的な転回が不可欠なのである。――本文より ●山城むつみ氏は、私が近年最も注目する批評家である。 一見して穏やかで地味だが、つねに最も困難な問題に取り組む姿勢には凄みを覚える。――柄谷行人
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転形期と思考
発売日:1999年08月20日
中野重治、椎名麟三、吉本隆明、福本和夫、萩原朔太郎……。内部の論理を社会の現実と拮抗させうる場所はどこにあるか? 期待の俊英の長編評論。 中野重治、椎名麟三、吉本隆明、福本和夫、萩原朔太郎…… 内部の論理を社会の現実と拮抗させうる場所はどこにあるか 期待の俊英の長編評論 フォイエルバッハに関するテーゼにおいてマルクスは唯物論の、観照(理論)から活動(実践)への、受動(情念)から能動(行動)への、説明から変更への転回を定式化しているが、唯物論のこのマルクス的転回には、たとえば椎名麟三が死をめぐる倫理的葛藤(ペシミズム)の末たどりついたような「たたかうユーモア」が必要なのだ。それなしには、唯物論はいつまでも「世界」を即物的に解釈しつづけるだけだろう。そこからは「世界」を「変える」実践は出てこない。「政治的な社会的な諸問題に対してほんとうにたたかって生きて行くということ」が出てこない。「コラムニスト」でありマテリアリストであるには、認識論上の切断ではなく、椎名が「ユーモア」と呼ぶ倫理的な転回が不可欠なのである。――本文より ●山城むつみ氏は、私が近年最も注目する批評家である。 一見して穏やかで地味だが、つねに最も困難な問題に取り組む姿勢には凄みを覚える。――柄谷行人