
塔の中の女
トウノナカノオンナ
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早稲田文学新人賞作家、怒濤の450枚。「公爵を破壊せよ」。エレクトラの命令はオレステスを震撼させた。気鋭の想像力が架空都市を燃焼させる。圧倒的筆力で描くノンストップ純文学 荒れ地の図書館でエレクトラと再会したオレステスは、城の中心部へ、塔の頂へと近づいていく。 僕は永久に少年のまま年を重ねてゆくはずだった――。 「僕は、自分の姉さんの名前を知りたい」と、恐れながら、やっと言った。「エレクトラ」姉は突っ伏したまま、顔も上げずに返答した。《エレクトラ》……《エレクトラ》……僕は何度も呟きながら、だんだんと嬉しさがこみ上げてくるのを感じた。ずっと昔から知っている名前であるような気がした。その名前と、僕に顔を見せない姉が一体となって、僕の心に浸透してゆくような、よろこびだった。「素敵な名前だ。羨ましい」「ばか!」と姉は言いすてて、あきれたように書庫の中へ戻っていった。――<本文より> 新鋭が紡ぎ出す、圧倒的な物語
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塔の中の女
発売日:2011年09月22日
早稲田文学新人賞作家、怒濤の450枚。「公爵を破壊せよ」。エレクトラの命令はオレステスを震撼させた。気鋭の想像力が架空都市を燃焼させる。圧倒的筆力で描くノンストップ純文学 荒れ地の図書館でエレクトラと再会したオレステスは、城の中心部へ、塔の頂へと近づいていく。 僕は永久に少年のまま年を重ねてゆくはずだった――。 「僕は、自分の姉さんの名前を知りたい」と、恐れながら、やっと言った。「エレクトラ」姉は突っ伏したまま、顔も上げずに返答した。《エレクトラ》……《エレクトラ》……僕は何度も呟きながら、だんだんと嬉しさがこみ上げてくるのを感じた。ずっと昔から知っている名前であるような気がした。その名前と、僕に顔を見せない姉が一体となって、僕の心に浸透してゆくような、よろこびだった。「素敵な名前だ。羨ましい」「ばか!」と姉は言いすてて、あきれたように書庫の中へ戻っていった。――<本文より> 新鋭が紡ぎ出す、圧倒的な物語