
電子あり
背中の記憶
セナカノキオク
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幼き眼に焼き付けた、哀しくも愛おしい家族の肖像。 記憶の奥にしまわれた原風景が鮮やかに甦り、置き忘れてきたいくつもの感情が揺り起こされる、珠玉の物語、全13篇。 これは過去の思い出なんかではなく、かさぶたの下の、新しい肌だ。――加瀬亮(俳優) 年代の違う写真家の、目と皮膚で切り取ったような、ごく個人的な家族の記憶なのに、なぜだろう、このぜんぶ、私は知っている。知りすぎていて、泣けた。もう帰らない日々と、決して失われないものをまざまざと見せつけられて、泣いたのである。――角田光代(作家) 「中学3年生の2月、大好きだった祖母をわたしは亡くした。それは突然の、そしてわたしにとって初めての喪失だった。……祖母がどうやってわたしを叱り、やさしく見つめたか、そんなことも思い出せなくなってしまった時、わたしの中で残っていたのは、居間でつまらないテレビを見て、タバコを吸っているあの背中だった。……いまでも、誰かの背中にシャッターを切ってしまうことがある。祖母の後ろ姿を取り戻せるのではないかという期待とともに。」――<本文より> 第26回講談社エッセイ賞受賞