
大日本・満州帝国の遺産
ダイ"ニホンマンシュウテイコクノイサンニッポン
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満州が生んだ日韓の権力者、岸信介と朴正熙の軌跡から満州国の遺産を問い直す。 満州帝国軍人・高木正雄として戦時を生き、解放後は韓国大統領となって近代化を達成した朴正熙。満州での産業開発を推進し、戦後はA級戦犯から首相に登り詰めて高度成長を発進した岸信介。戦後、日韓両国の枠組みを形成した2人の足跡から、揺籃の地・満州の虚実と意義を究明する。 ■満州が生んだ日韓の権力者と戦後史のルーツ 日韓両国は、戦後どん底の状態から国家主導の経済運営により日本は「日本的経営システム」と、韓国は「漢江の奇跡」と称賛される高度成長を達成した点で共通しています。その主導者こそ元首相・岸信介であり、生涯大統領だった朴正熙でした。その岸を政治家として鍛え上げたのも、また軍事クーデタで実権を掌握した朴を軍人に変身させたのも満州国でした。本書は2人の軌跡を辿り、日韓戦後史における満州国の意義を明らかにします。 ■革新官僚・岸信介と帝国軍人・高木正雄こと朴正熙の満州時代 革新官僚の岸信介は、満州国に赴任すると産業開発五ヵ年計画の指揮をとり、満州重工業開発設立にも辣腕を揮って総力戦体制の壮大な実験をします。一方、植民地朝鮮の教師から活路を求めて満州に渡った朴は、日本式に高木正雄と改名し満州軍官学校を首席で卒業。帝国軍人として終戦時には中尉に昇進していました。満州はこの2人の夢を育てる揺籃の地でしたが、敗戦による挫折も両者に共通していたのです。 ■未完のプロジェクトを達成させた満州体験と満州人脈 戦後、政界に復帰した岸は、日満一体の戦時体制作りの手法を生かして保守合同を実現、満州国での重要産業への傾斜生産方式を活用して高度成長を発進させます。一方の朴も満州軍官学校の人脈を結集して軍事クーデタで実権を掌握。大統領に就任後は満州国での体験を生かして重化学工業化と農村近代化の両輪で、高度経済成長をもたらしたのです。2人の足跡はまさに満州での未完のプロジェクトを日韓の戦後に実現したものでした。
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興亡の世界史 大日本・満州帝国の遺産
発売日:2016年06月11日
東京帝大の学生時代は北一輝に心酔し、官界に進んでからは革新官僚として満州の経営に辣腕を振るった岸信介。敗戦後はA級戦犯容疑から総理の座に昇り詰め、高度成長を発進させて昭和の妖怪とも呼ばれる。かたや教師から立身のため満州国軍人となった青年は、戦後、韓国軍の中で頭角を現し、クーデタで政権を掌握。独裁者となって漢江の奇跡と呼ばれる高度成長を達成する。朴正煕と岸信介、二人の揺籃の地、満州国の遺産を問う。 講談社創業100周年記念企画として刊行された全集「興亡の世界史」の学術文庫版第一期のうちの第5冊目。 戦前は革新官僚として満州国の経営に辣腕を振るい、戦後はA級戦犯容疑のどん底から首相に昇り詰めて高度経済成長を発進させ、日米安保改定の立役者となった岸信介。 かたや植民地の教師から満州国軍官学校に入学し、皇帝・溥儀から金時計を授与された帝国軍人・高木正雄。敗戦後、朴正煕として韓国軍のなかで頭角を現しクーデタを決行。大統領となってからは「漢江の奇跡」とよばれる近代化を成し遂げる。 昭和の妖怪・岸信介と独裁者・朴正煕は、大日本帝国の「生命線」・満州の地で、権力を支える人脈を築き、国造りの方策を学んだ後、戦後の激変期を冷戦によるアメリカの方針転換で死の淵から奇跡的に生還したことで共通する。 アジアのニュー・アトランティスのように聳え立ち、蜃気楼のように消えた満州国。しかし、その影響力は現代の日韓両国の政治経済の深部にまで及んでいる。戦後の日本と韓国の枠組みをつくり、その孫(安倍晋三首相)と娘(朴槿恵大統領)が今なお日韓両国の権力の座を占めている二人の足跡から、満州国の虚実と遺産を問い直す。 原本:『興亡の世界史 第18巻 大日本・満州帝国の遺産』講談社 2010年刊