立志・苦学・出世-受験生の社会史

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立志・苦学・出世-受験生の社会史

リッシ・クガク・シュッセジュケンセイノシャカイシ

講談社現代新書

受験生はどこから来たのか。怠惰・快楽を悪徳とし、刻苦勉励、蛍雪読書する禁欲的生活世界は勉強立身の物語に支えられる。「苦しい受験生」を生んだ近代日本の心性をさぐる。

努力とガンバリズムの時間と空間──受験準備の世界とは努力と勤勉の世界である。苦労しない怠け者は受験生ではない。だから受験滑稽譚にでてくるトリックスターの名前は「怠雄」(註3)である。快楽は努力と勤勉の世界を汚すものだから徹底的に排除される。快楽につながるものは「誘惑」として危険視された。受験生は手淫を異常なほど悩んだ。そしてかれらはそれを記憶力の減退や頭が悪くなるという恐怖で苦悩した。しかしそれは、精気を放出することによる気の衰弱への恐怖である。と同時に、この種の「快楽」は努力と勤勉の受験空間の「反」世界だったからである。その意味で、「受験生の手記」の健吉が絶望してから、売春街にむかうというものはきわめて象徴的な行為である。「快楽」はこの空間にふさわしくない。──本書より


目次

●受験生の一日──明治四〇年七月九日
 第一高等学校入試会場
●勉強立身から順路の時代
 勉強ハ富貴ヲ得ル資本
●受験雑誌の誕生
 二大月刊受験雑誌の登場
●「受験生」という物語
 努力とガンバリズムの時間と空間
●苦学と講義録の世界
 苦学サバイバル率は一〇〇人に一人
●受験のポスト・モダン現象
 試験の秘儀性が剥がれるとき

書誌情報

紙版

発売日

1991年02月18日

ISBN

9784061490383

判型

新書

価格

定価:770円(本体700円)

通巻番号

1038

ページ数

206ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介

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