三国志と日本人

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三国志と日本人

サンゴクシトニホンジン

講談社現代新書

どうして日本人は「三国志」が好きなのか。本家の中国では極め付きの悪人とされている曹操が、なぜ日本では人気なのか。「日本書紀」からゲームソフトに至るまで、日本人の心をとらえ続ける三国志の魅力に迫る。

父祖代々の『三国志』
お膝元の中国での『三国志演義』の親しまれ方と日本のそれとはかなり違う。乱暴に要約すると、中国人は芝居から入り、さらにむかしは、寄席の講談によって親しんだ。芝居は人物を思いきってタイプ化する。『三国志演義』の曹操といえば、白塗りの極め付きの悪人であるから、芝居で親しんだ長い伝統を持つ中国人から、曹操悪玉の印象は容易にぬぐえない。
その点、日本人は江戸時代以後、主に挿絵入りの書物によって『三国志演義』に親しんだから、かなり分析的に人物を見ている。とくに吉川英治の『三国志』は、曹操を魅力的に描いており、これがロングセラーとなったものだから、日本人に曹操好きが多いのも無理のないところである。
ざっとこのように『三国志演義』への親しみ方自体に、中国と日本の違いが明らかだか、江戸時代以前に、日本人の上層部には正史の『三国志』へのかなり長いアプローチの歴史があった。極端にいえば、日本史の各時代に、いつも『三国志』が、なんらかのかたちで影を落としていた。その歴史の跡を述べようとするのが、わたくしのねらいである。――(本書より)


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目次

序――父祖代々の三国志
第1章 日本史編纂と『三国志』
1――『日本書紀』に落とした影
2――2人の万葉歌人
第2章 軍記物語の時代
1――ある空白の時期
2――『太平記』の出現
第3章 江戸文学と『三国志演義』
1――湖南文山の翻訳
2――『八犬伝』のなかの『演義』
第4章 明治に起こった「内発」
1――内藤湖南『諸葛武候』
2――「星落秋風五丈原」
第5章 日本版『演義』の誕生
1――吉川英治『三国志』
2――「奸雄」曹操の再評価
3――三国志世界の内面へ
第6章 三国志ブームの到来
1――『英雄ここにあり』と『秘本三国志』
2――「読む」から「体験する」時代へ
三国志名場面集

書誌情報

紙版

発売日

2002年12月16日

ISBN

9784061496378

判型

新書

価格

定価:770円(本体700円)

通巻番号

1637

ページ数

232ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介

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