命の器

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命の器

イノチノウツワ

文芸(単行本)

精神の自画像、いのちのうつわ。
清澄な抒情を湛えた文学世界の秘密を明かす。戦後生まれの本格派・宮本輝の自伝的エッセイ。

父は事業に失敗して、殆ど家に寄りつかなくなり、よその女のもとで暮らすようになった。父は見るたびに憔悴し老いていった。……父がたまに家に帰ってくると、私は何やかやと口実を作って表に出て行き、出来るだけ顔を合わさないようにした。そんな私を、父はある哀しさの漂う目で見つめた。いま、私はときおり押さえがたい悔恨とともに、そのときの父の目を思い出す。……父との思い出はさまざまなものが複雑にもつれ合って、ひとことで言い表わすことなど出来はしないのだが、私を溺愛し、どんな人間でもいい、ただ大きくなって欲しいと念じつづけてくれた人がこの世にあったということを、筆舌に尽くしがたい感謝の念で思い起こすのである。――(「父がくれたもの」より)


書誌情報

紙版

発売日

1983年10月20日

ISBN

9784062007184

判型

四六

価格

定価:1,388円(本体1,262円)

ページ数

197ページ

収録作品

  • 作品名

    吹雪

    初出

  • 作品名

    父がくれたもの

    初出

  • 作品名

    わが心の雪

    初出

  • 作品名

    大地

    初出

  • 作品名

    東京は嫌い

    初出

  • 作品名

    雨の日に思う

    初出

  • 作品名

    かぐや姫の「神田川」

    初出

  • 作品名

    正月競馬

    初出

  • 作品名

    改札口

    初出

  • 作品名

    十冊の文庫本

    初出

  • 作品名

    精神の金庫

    初出

  • 作品名

    蟻のストマイ

    初出

  • 作品名

    命の器

    初出

  • 作品名

    馬を持つ夢

    初出

  • 作品名

    街の中の寺

    初出

  • 作品名

    私の愛した犬たち

    初出

  • 作品名

    「内なる女」と性

    初出

  • 作品名

    南紀の海岸線

    初出

  • 作品名

    貧しい口元

    初出

  • 作品名

    潮音風声

    初出

著者紹介

既刊・関連作品一覧