手もちの時間

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手もちの時間

テモチノジカン

文芸(単行本)

●暮しを見つめる最新随筆集68篇

過ぎた時の折々の想いと懐しい風景
手もちの時間を彩るあれこれ

それにしても、昔は寒かった。母の手にはつま切れがきれ、私の耳や手には霜やけがたえなかった。夜廻りの拍子木がカチ、カチ、カチカチと音を刻んで近付いてくる。家の角から横町に向って、火の用心と声を掛けて又、遠退いてゆく。しみじみ外の寒さが思われる。刺子の半纏を羽織っても拍子木を持つ手はつめたかろう。寒さが寂しさに感じられるときであった。──本文より


書誌情報

紙版

発売日

1999年11月10日

ISBN

9784062098670

判型

四六

価格

定価:1,650円(本体1,500円)

ページ数

234ページ

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