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背中の記憶
セナカノキオク
- 著: 長島 有里枝

幼き眼に焼き付けた、哀しくも愛おしい家族の肖像。
記憶の奥にしまわれた原風景が鮮やかに甦り、置き忘れてきたいくつもの感情が揺り起こされる、珠玉の物語、全13篇。
これは過去の思い出なんかではなく、かさぶたの下の、新しい肌だ。――加瀬亮(俳優)
年代の違う写真家の、目と皮膚で切り取ったような、ごく個人的な家族の記憶なのに、なぜだろう、このぜんぶ、私は知っている。知りすぎていて、泣けた。もう帰らない日々と、決して失われないものをまざまざと見せつけられて、泣いたのである。――角田光代(作家)
「中学3年生の2月、大好きだった祖母をわたしは亡くした。それは突然の、そしてわたしにとって初めての喪失だった。……祖母がどうやってわたしを叱り、やさしく見つめたか、そんなことも思い出せなくなってしまった時、わたしの中で残っていたのは、居間でつまらないテレビを見て、タバコを吸っているあの背中だった。……いまでも、誰かの背中にシャッターを切ってしまうことがある。祖母の後ろ姿を取り戻せるのではないかという期待とともに。」――<本文より>
第26回講談社エッセイ賞受賞
書誌情報
紙版
発売日
2009年11月21日
ISBN
9784062158961
判型
四六
価格
定価:1,650円(本体1,500円)
ページ数
242ページ
初出
『群像』2008年8月~2009年7月号