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美術という見世物 油絵茶屋の時代
ビジュツトイウミセモノアブラヤヂャヤノジダイ
- 著: 木下 直之

写真油絵、生人形、パノラマ館、石膏細工、西洋目鏡……「よくお目を止めて御覧下さい」
「西欧の近代」と「江戸の伝統」の邂逅……。官による「美術」の指導と民の「見世物」への欲望が交錯した幕末・明治を徹底的に再検証する。
解説:丹尾安典
なぜ仏像は日本美術を代表する彫刻作品になったのか? この問いに答えるために、細工師、油画師、彫刻師たちが活躍した幕末・明治の見世物小屋を訪れるところから始めよう。粋な口上とともに陳列されるは、生人形、西洋目鏡、写真掛軸、写真油絵、戦場パノラマ……。文明の衝突!?が生んだ「奇妙な果実」を検証し、美術周辺の豊饒な世界を再評価する。
美術館関係者は、美術展が見世物だと呼ばれることをひどく嫌うのである。(略)見世物は美術展が生まれ育った家なのである。長じてのち生家をやみくもに忌み嫌い、その貧しさを恥じるのは、実は、近代社会の中で、日本人が美術にどのような地位を与えてきたかに密接にからんでいる。見世物に向けた憎悪の形成は、近代美術の形成と裏表の関係にある。そのあたりの事情を知るために、生家は本当に貧しかったのかどうかを見つめ直すことから、本書を始めようと思う。――<「乍憚口上」より>
※本書の原本は、1993年、平凡社より刊行されました。
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目次
第1章 石像楽圃 夫婦か知らぬど匹付合
第2章 手長足長 活ける人に向ふが如し
第3章 胎内十月 色事は何処の国でも変りやせぬ
第4章 万国一覧 洋行せずして異国を巡る奇術
第5章 油絵茶屋 みるは法楽みらるるも衆生済度
第6章 パノラマ 人造ニナリテ天設ヲ欺ク奇奇怪怪
第7章 写真油絵 写真ニシテ油絵油絵ニシテ写真
第8章 甲冑哀泣 油絵ハ能く数百年の久しきを保つ者なり
第9章 写真掛軸 之を眺むるに風韻雅致を極め
書誌情報
紙版
発売日
2010年11月12日
ISBN
9784062920216
判型
A6
価格
定価:1,210円(本体1,100円)
通巻番号
2021
ページ数
352ページ
シリーズ
講談社学術文庫
初出
原本は、1993年、平凡社より刊行された。