
マイページに作品情報をお届け!
ドラキュラ・シンドローム 外国を恐怖する英国ヴィクトリア朝
ドラキュラシンドロームガイコクヲキョウフスルエイコクヴィクトリアチョウ
- 著: 丹治 愛

急成長を遂げた周辺国からの侵略恐怖、増加する貧窮移民の不安、友好国へのぬぐいがたい不信、新たな感染症の脅威……「ドラキュラ」の恐怖と魅力の源泉には、黄昏を迎えた大英帝国の外国恐怖症があった。ゴシック・ホラーの金字塔に織り込まれた、ヴィクトリア朝イギリス社会の闇を描き出す!
世界でもっとも有名な吸血鬼「ドラキュラ」。
数ある吸血鬼作品のなかでも特権的な地位を得て、現代に至るまで映像化が繰り返され、日本では吸血鬼の代名詞にもなっています。
そのドラキュラの恐怖と魅力の源泉には、19世紀末イギリス社会に蔓延する深刻な外国恐怖症がありました。
「太陽の沈まぬ帝国」、「世界の工場」と謳われた栄光は過ぎ去り、軍事・経済ともに急成長を遂げつつある周辺国からの侵略恐怖、増え続けるユダヤ人など貧窮移民への不安、搾取してきたアジアの植民地から入ってくる新たな感染症の脅威……。
落日の大英帝国に生きる人々は心の奥底で何を恐れ、そしてドラキュラは生みだされたのか。
『パンチ』などに掲載された風刺画をふんだんに使いながら、ゴシック・ホラーの金字塔から読み解く世紀末ヴィクトリア朝の社会!
イントロダクション
第1章 ドラキュラの謎
第2章 ドラキュラの年は西暦何年か
帝国主義の世紀末
第3章 侵略恐怖と海峡トンネル計画の挫折
第4章 アメリカ恐怖と「栄光ある孤立」の終焉
反ユダヤ主義の世紀末
第5章 ユダヤ人恐怖と外国人法の成立
第6章 混血恐怖とホロコースト
パストゥール革命の世紀末
第7章 コレラ恐怖と衛生改革
第8章 瘴気恐怖と細菌恐怖
おわりに――ヴィクトリア朝外国恐怖症の文化研究
増補 もうひとつの外国恐怖症――エミール・ゾラの〈猥褻〉小説と検閲
学術文庫版あとがき
引用史料一覧
コラム
吸血鬼の系譜/シャルコーの催眠術/一八九三年一〇月二日のピカディリ・サーカス/ダイヤモンド・ジュビリー/火星人/海峡トンネル・パニック/ベアリング銀行の投機失敗/ロスチャイルド一族の結婚/ロンドンとテムズ川の汚染……ほか
ⒸAi Tanji
- 前巻
- 次巻
オンライン書店で購入する
書誌情報
紙版
発売日
2023年11月09日
ISBN
9784065338308
判型
A6
価格
定価:1,441円(本体1,310円)
通巻番号
2791
ページ数
384ページ
シリーズ
講談社学術文庫
電子版
発売日
2023年11月08日
JDCN
06A0000000000725798P
初出
本書の原本は1997年に『ドラキュラの世紀末――ヴィクトリア朝外国恐怖症の文化研究』として東京大学出版会から刊行されました。
著者紹介
著: 丹治 愛(タンジ アイ)
1953年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。東京大学名誉教授。著書に『神を殺した男』、『モダニズムの詩学』、『批評理論』(編)、『二〇世紀「英国」小説の展開』(共編)、訳書にヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』、ブラム・ストーカー『ドラキュラ』(共訳)などがある。
オンライン書店一覧
関連シリーズ
-
アレクサンドロス大王 「世界征服者」の虚像と実像
-
地上の夢キリスト教帝国
-
記憶の中のファシズム
-
ビザンツ 幻影の世界帝国
-
芸術と策謀のパリ
-
反ユダヤ主義
-
浮気な王の宮廷生活
-
ローマ帝国の誕生
-
中世ヨーロッパの色彩世界
-
マンガ ローマ帝国の歴史
-
ローマ建国伝説 ロムルスとレムスの物語
-
生き残った帝国ビザンティン
-
地中海世界 ギリシア・ローマの歴史
-
古典ギリシア
-
姦通裁判 ―18世紀トランシルヴァニアの村の世界―
-
ハプスブルク帝国
-
「哲学と政治」講義
-
科学vs.キリスト教 世界史の転換
-
ハプスブルクとオスマン帝国-歴史を変えた<政治>の発明
-
傭兵の二千年史
-
動物裁判
-
東インド会社 巨大商業資本の盛衰
-
中世シチリア王国
-
大英帝国
-
戦うハプスブルク家
-
聖書VS.世界史
-
神聖ローマ帝国
-
新書ヨーロッパ史 中世篇
-
居酒屋の世界史
-
海の世界史
-
音楽のヨーロッパ史
-
悪女入門 ファム・ファタル恋愛論
-
ローマ五賢帝
-
ローマはなぜ滅んだか
-
ロスチャイルド家
-
ヨーロッパ「近代」の終焉
-
メディチ家
-
ブルゴーニュ家
-
ハプスブルク家の女たち
-
ハプスブルク家
-
デパートを発明した夫婦
-
エリザベス一世
-
イタリア・ルネサンス
-
イギリス近代史講義
-
イギリス王室物語