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決壊
ケッカイ

漂流する人々の心のわだかまり
優しさを押し売りする若者を痛烈に批判する中年のディスク・ジョッキイ、テディ・ベア(「金魚鉢の囚人」)、雨もよいの逗子のリゾート・ホテルを舞台に、抑制のきいた文章で綴る鬱屈した人々の一夜(「ビートルズの優しい夜」)、1960年代から80年代の<現実>を描き、漂うように生きる主人公たちの心に蟠(わだかま)っている信じきれぬものを抽出。ほかに表題作、「息をひそめて」、「パーティー」の傑作5篇。
小林信彦
「決壊」はとても愛着のある微妙な作品なので、今まで文庫に入れなかった。(略)「決壊」を今まで文庫に入れなかったのは、私小説というよりも、もっと私的ななにかを、他人の目に触れないところに隠しておきたかったからである。そうだとすると、活字にして発表することと矛盾するのだが、こうしたすれすれの作業が好きなのであり、なかなかやめられない。小説を書くという作業が、本来は、そういうものである気もする。――<「著者から読者へ」より>
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書誌情報
紙版
発売日
2006年10月12日
ISBN
9784061984561
判型
A6
価格
定価:1,430円(本体1,300円)
ページ数
368ページ
シリーズ
講談社文芸文庫
初出
本書は、以下を底本とし、著者により一部訂正を加えた。金魚鉢の囚人(『ビートルズの優しい夜』’82年6月、新潮文庫)、決壊(『家の旗』’77年3月、文藝春秋)、息をひそめて(『家族漂流』’96年6月、文春文庫)、ビートルズの優しい夜(『ビートルズの優しい夜』’82年6月、新潮文庫)、パーティー(『小林信彦の仕事』’88年7月、弓立社)
著者紹介
著・その他: 小林 信彦(コバヤシ ノブヒコ)
解説: 坪内 祐三(ツボウチ ユウゾウ)