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ひとりでいいんです─加藤周一の遺した言葉
ヒトリデイインデスカトウシュウイチノノコシタコトバ
加藤周一氏が逝ってはや3年。まさに危機に直面している日本と世界の現状を見て「加藤周一だったらなんと言うだろうか……」との思いを抱く向きも多いかもしれません。その一方で「カトウシュウイチってだれ?」という人も確実に増えているでしょう。
本書は、戦後日本を代表する知識人がその晩年、市民グループの求めに応じて談論風発した記録です。
内容は多岐にわたり、戦争と憲法、ファシズム、歴史認識問題、ヒューマニズムと文学・映画、社会主義の功罪など市民からの時に素朴、時に尖鋭な質問に真正面から答え、さらに踏み込んだ答えを示すさまは、さまざまな批判はあるにせよ、「戦後」という時空間の最良の部分がどこにあるかを示してくれます。後続の世代に託された軽やかにして熱い言葉の数々。加藤周一の人物像に迫る入門書としても読める本です。
ⒸYuichiro Motomura/Bonjinkai
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目次
第一章 こんどは勝ちたいですね──戦争と憲法を語る
1 十五年戦争
2 濁流に呑まれて
3 私たちの憲法のゆくえ
第二章 ひとりでいいんです──歴史をめぐる対話
1 何を読み、いかに答えるか
2 戦争認識と戦争責任
3 「近代化」論の陥穽
第三章 複数の視点から──文学と宗教をめぐる対話
1 『神幸祭』の世界
2 『日本文学史序説』の射程
3 科学と神秘主義
第四章 「名前」の力、眼の力──芸術をめぐる対話
1 世界のクロサワと日本の非常識
2 『しみじみ日本・乃木大将』を観る
3 若冲の視線
第五章 技術者と知識人のあいだ──現代社会をめぐる対話
1 社会主義の未来
2 中国をどう見るか
3 科学と個性
第六章 人生のいちばん大事な部分──最後の対話
1 周恩来のジョーク
2 わが信仰と語学修業
3 ソルボンヌの蛙
加藤周一さんと凡人会──少し長めのあとがき
書誌情報
紙版
発売日
2011年12月16日
ISBN
9784062174497
判型
四六
価格
定価:1,980円(本体1,800円)
ページ数
282ページ
電子版
発売日
2022年07月29日
JDCN
06A0000000000511739E
著者紹介
(かとう・しゅういち) 1919~2008。東京生まれ。旧制府立一中、旧制第一高等学校を経て東京帝国大学医学部卒業。学生時代から文学に関心を寄せ在学中に中村真一郎・福永武彦らと「マチネ・ポエティク」を結成。1947年、中村真一郎・福永武彦との共著『一九四六・文学的考察』を発表し注目される。また同年、『近代文学』の同人となる。フランス留学中、日本の雑誌や新聞に文明批評や文芸評論を発表。帰国後にマルクス主義的唯物史観の立場から「日本文化の雑種性」などの評論を発表し、1956年にはそれらの成果を『雑種文化』にまとめて刊行した。1958年に医業を廃し、以後評論家として独立。60年安保闘争においては改定反対の立場から積極的に発言、同年秋、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学に招聘され日本の古典の講義をおこなった。これは1975年に『日本文学史序説』としてまとめられている。以後、国内外の大学で教鞭をとりながら執筆活動を続けた。著書多数。戦後日本を代表する知識人の一人である。
著: 凡人会(ボンジンカイ)
(ぼんじんかい) 1994年に発足した「現代史勉強会」を前身に1997年10月に発足した東京在住の10人前後ののメンバーからなる市民の勉強会。加藤周一とのあいだに 『「戦争と知識人」を読む ― 戦後日本思想の原点』『テロリズムと日常性―「9・11」と「世なおし」68年』(いずれも青木書店)がある。