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蝶々さん(上)
チョウチョウサンジョウ
- 著: 市川 森一

明治初頭、長崎港外の深堀に士族の娘として生まれた蝶は、父の形見の『学問のすゝめ』を読んで育つ。かくれキリシタンの少女ユリとも仲良しになり、文明開化の夢がふくらむものの、コレラの流行で母と祖母を失って運命は一変。小学校を卒業すると同時に丸山遊郭「水月楼」の女将の養女となって長崎へ向かう。(講談社文庫)
「蝶々夫人」は実在した!
士族の娘として生まれ文明開化の夢を信じた聡明な少女。
明治初頭、長崎港外の深堀に士族の娘として生まれた蝶は、父の形見の『学問のすゝめ』を読んで育つ。かくれキリシタンの少女ユリとも仲良しになり、文明開化の夢がふくらむものの、コレラの流行で母と祖母を失って運命は一変。小学校を卒業すると同時に丸山遊郭「水月楼」の女将の養女となって長崎へ――。
やえは茜色に染まっていく西空に独り言のように語りかけた。
「……この景色ばよう憶えておきんしゃい。いつかきっと、おまえはこの坂ば上がってきて、この景色の中に入らんばでけん。こいからは、女でん将来ば持たんばでけんて田代先生に言われたね。そうたい、この景色がおうちの将来たい。どがんことがあってでん、もう一回この坂ば上がってきて、今日の異人さんたちとの約束ば果たさんばね」
――母はだれに語りかけているのだろう?
お蝶は不安に駆られて涙がでてきた。
そして、大きな西日に向かって肯いた。――<本文より>
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目次
序章
佐賀の乱
迷 蝶
遠い歌声
紅 燈
花 影
書誌情報
紙版
発売日
2011年07月15日
ISBN
9784062770255
判型
A6
価格
定価:869円(本体790円)
ページ数
520ページ
シリーズ
講談社文庫
電子版
発売日
2014年03月20日
JDCN
0627702500100011000U
初出
2008年10月に小社より刊行されたもの。