
百代の過客 日記にみる日本人
ハクタイノカカクニッキニミルニホンジンニッポン
マイページに作品情報をお届け!
円仁、貫之、孝標女、定家、宗祇、芭蕉、そして名もなき旅の遊女がつづった日記―― 数百年の時をこえて「永遠の旅人」の声が聞こえる 読売文学賞・日本文学大賞 受賞作 日本人にとって日記とはなにか。平安時代の『入唐求法巡礼行記』『土佐日記』から江戸時代の『野ざらし紀行』『笈の小文』『奥の細道』まで、八十編におよぶ日記文学作品の精緻な読解を通し、千年におよぶ日本人像を活写。日本文学の系譜が日記文学にあることを看破し、その独自性と豊かさを探究した、日本文化論・日本文学史研究に屹立する不朽の名著。 そもそも私が日記に心を向けたのは、(中略)今日私が知る日本人と、いささかでも似通った人間を、過去の著作の中に見いだす喜びのためだったのである。最もすぐれた日記は、その作者を最もよく表し、逆に最もつまらぬ日記は、先人の詩歌や日記から学んだ歌枕の伝統を、ただいたずらに繰り返すのみである。日本人はいにしえより今日に至るまで、読書によって知悉する風景を己自身の目で確かめ、所の名物を己も口にすることに、格別の喜びを抱いてきた。――<本書「終わりに」より> ※本書は、1984年に朝日新聞社より刊行された同名の書籍の上下巻を合本にしたものです。
TOPICS

百代の過客 〈続〉 日記にみる日本人
発売日:2012年04月11日
遣欧米使節、鷗外、漱石、子規、蘆花、荷風 有名無名の人々が見た近代日本の光と陰 幕末から明治へ――「若い時代」を生きた日本人のこころ 西洋との鮮烈な邂逅で幕を開けた日本の近代。遣欧米使節、諭吉、鷗外、漱石、植木枝盛、子規、啄木、蘆花、荷風――。有名無名の人々が遺した三十二篇の日記に描かれる、幕末・明治という日本の「若い時代」に現出したさまざまな異文化体験。そこに浮かび上がってくる、日本人の心性と日本人像、そして近代日本の光と陰。日記にみる日本人論・近代篇。 私が取り上げた日記の中で、私の関心を最も惹いたものは、日記作者その人の声にほかならなかった。私はいつも、なにか心からの声に、耳を傾けようと努めた。表現された感情のいかんにかかわらず、単に熟達した文体ではなく、なにかはっきりと、個性的な音色のようなものを聞こうとした。私はまた、文学史家が誰一人注目することのない日記の中にさえ、それを読む今日の読者が、何百年も昔に生きたその作者に突然一種の親近感を抱くような、なにか感動的な瞬間がないかと探し求めた。――本書「序」より ※本書は、1988年に朝日新聞社より刊行された同名書籍の上下巻を合本にしたものです。なお、初出は、1986年10月13日から1987年10月29日にかけての朝日新聞での連載です。