
真幸くあらば
マサキクアラバ
マイページに作品情報をお届け!
死刑確定──その日からみんなの心が1つに! 絞首台(バタンコ)の日がすぐそこに。初めて人を愛することを知った若き死刑囚は獄中養母と秘密通信。教誨師、看守、実母も国家に奪われる命の意味を噛みしめる。 淳より 1992年5月1日。 少し急ぎます。 この頃、病的な食欲でかえって疲れています。でも、この短い通信にふさわしくないので、カット。 決して泣きを入れて、気を引こうなどと思いません。今朝の9時頃、8人か9人の靴音が舎房全体にいっせいに轟き、ぎくりとしました。代議士か法務省の偉い人の視察みたいなものでしょう、肝臓が汗を垂らしてちょっぴり小さくなった感じです。だから、急ぎたいのです。 正直いって茜さんの告白は、はじめ驚きました。次に、情けない人間同士という感情がでてきました。そして、いまは、そうやって悶悶とする茜さんがもっと好きになりました。おれの場合、男として女の人を、から、それを含んで、人間が人間へという気持ちが人間へという気持ちです。 聞かせて欲しい。好きになってはいけないのかと。 返事を、早く、早く知りたい。 「茜」より ’92・5・14 いまは答えられないのです。 許して。
TOPICS

真幸くあらば
発売日:2009年11月13日
南木野淳は、金欲しさに盗みに入り犯罪の目撃者となった男女を殺害した。刑務所の中で多くの書籍、思想に出会った淳は「新エロイーズ」読書を機に愛についての思考を重ねる。自分の犯行の愚かさを知り、深く罪を自覚した彼は、罪を償うため控訴も取りやめ、死刑が確定する。淳は、教会ボランティアの榊原茜に恋い焦がれるが、茜は被害者男性の婚約者だった……。刑務所のなかの奇蹟のような愛を描く慟哭の純愛小説。(講談社文庫) 衝動殺人で死刑囚となった南木野淳。他の女と寝ていた婚約者を殺された榊原茜。 弁護士の勧めで茜は拘置所の淳を訪ねる。交わるはずのなかった2人は、奇蹟の恋におちた。差し入れの聖書の行間に書き込まれた秘密通信だけが真実を語る。死刑執行までの愛。人が人を裁く意味を深く考えさせる慟哭の純愛小説。