
三島由紀夫文学論集
マイページに作品情報をお届け!
精神と肉体、文学と行動、その根源的一致を幻視する 告白と批評の中間形態、秘められた批評と著者自らが言い、文学と行動、精神と肉体との根源的な一致を幻視し、来たるべき死を強く予感させる、最後の自伝的長篇評論「太陽と鉄」を中心に、30歳の頃の旺盛な創作活動の根柢を明かす「小説家の休暇」等、稀有なる文学者の思索の結晶体ともいえる12篇を収録。三島文学の全体像とそのデモーニッシュな魅力をあますところなく示す全3巻論集。 三島由紀夫 このごろ私は、どうしても小説という客観的芸術ジャンルでは表現しにくいもののもろもろの堆積を、自分のうちに感じてきはじめた(略)そこで私はこのような表白に適したジャンルを模索し、告白と批評との中間形態、いわば「秘められた批評」とでもいうべき、微妙なあいまいな領域を発見したのである。それは告白の夜と批評の昼との堺の黄昏の領域であり、語源どおり「誰そ彼」の領域であるだろう。――<「太陽と鉄」より>
TOPICS

三島由紀夫文学論集(3) 虫明亜呂無編
発売日:2006年06月11日
孤高の美の実践者・三島の偏愛した人と作品のすべて 市川団蔵、中村芝翫、中村歌右衛門、沢村宗十郎へのオマージュにはじまる歌舞伎・演劇論、深く影響を受けたラディゲ、コクトオ、ワイルド、ジュネ等の外国文学論、さらには、二・二六事件の青年将校・磯部浅一の遺稿や『葉隠』まで、三島の美意識に刻みこまれた人と作品を縦横に論じ、小説の美学と演劇への情熱溢れる27篇を収録。批評家・三島由紀夫の文業を精選した論集全3巻完結。 三島由紀夫 折りにふれて、あるページを読んで感銘を新たにした本といえば、おそらく「葉隠」1冊であろう。わけても「葉隠」は、それが非常に流行し、かつ世間から必読の書のように強制されていた戦争時代が終わったあとで、かえってわたしの中で光を放ちだした。「葉隠」は本来そのような逆説的な本であるかもしれない。戦争中の「葉隠」は、いわば光の中に置かれた発光体であったが、それがほんとうに光を放つのは闇の中だったのである。――<「『葉隠』とわたし」より>