講談社文庫作品一覧

葉煙草(シガリロ)の罠
講談社文庫
森麻子は、京都の外国人観光客用ガイドである。フィリピンの貿易商・ベルナスを案内して清水寺にきたとき、英文パンフレットの購入を頼まれた。だが戻って来た彼女が目にしたものは、ベルナスの惨殺体だった。そしてベルナスの右手には、1個の10円玉が握られていた。彼は何を告げようとしたのか? 貿易と政争をからめた、意欲的推理長篇。

イソップの首に鈴をつけろ
講談社文庫
東大入試を突破したエリートの卵・今井章之は、郷里の熊本をあとにし、勇躍、東京へ向かうが、新幹線の車中で、謎の女と隣りあわせる。初対面のはずなのに、この女性は、いやに章之の個人的事情に詳しい。東大生といっても、そこは男の子。女に誘われるまま、若干の野心と期待を抱いて、名古屋で途中下車、ホテルへ向かうのだが、この昭和の三四郎を待ちうける運命は……。江戸川乱歩賞作家の青春ミステリー。

脱いで試して ―デパート店員日記―
講談社文庫
芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが、現代っ子デパート店員が売場狭しと繰りひろげる性態を描く「あたし」小説! ーーあたし、若さ溢れるデパート店員、自分でいうのも変だけど、グラマーで美人、とても魅力的な女の子なんです。デパートにくるお客さま、とてもオカシナ人が多い。女の人が試着した水着を好んでペロペロなめるおじさんがいたりして面白いんです。あたしも、下着売場の試着室で、お客さまに失礼のないように体まで使ってサービスしてあげたり、オモチャを買いにきたサラリーマンには小さな戦車で恥ずかしいことをされたり、結構、勤務はキビシイ。でも、あたし、心の中ではヒソカに楽しんでるんです……。

濡れて飛ぶ―スチュワーデス日記―
講談社文庫
芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが、スチュワーデスの性態を若さ溢れるお色気で描く「あたし」小説!ーーあたし、女子高校を卒業したばかりのビューティフルな女の子。憧れの航空会社の試験を見事にパスして、スチュワーデス見習いになったんです。でも、スチュワーデスの仕事って思っていたよりずっと大変。初めてのフライトでアフリカのジャングルに飛行機が不時着したり、怖いことも多い。それに、飛行機のお客さま、みんなとてもエッチなんです。ヘンなサービスを求められたりして、体がいくつあっても足りないくらい忙しい。でも、あたし、いろんな初体験のお蔭で、オンナとしてもだんだん開花してゆくみたい……。

ムーミン谷の夏まつり
講談社文庫
ジャスミンの香りにつつまれた6月の美しいムーミン谷をおそった火山の噴火。大水がおしよせてきて、ムーミン一家や動物たちは流され、ちょうど流れてきた劇場に移り住むことにした。ところが、劇場を知らないみんなが劇をはじめることになって……。国際アンデルセン大賞受賞作家の楽しいファンタジー。

柴錬捕物帖 岡っ引どぶ(続)
講談社文庫
どぶは飲む、打つ、買うと三拍子揃った岡っ引。そのどぶが深川木場で寒はぜ釣りとしゃれこんでいたとき、筏の下に隠密の死体を発見した……やがて、新春北風の吹きつのる夜、江戸を火の海と化す大陰謀が実行に移されんとする。その黒幕に挑むどぶ――「火焔小町」ほか2編を収録する、ご存じ柴錬捕物帖。

影の分岐―傑作短編集(六)
講談社文庫
人生は打算であると、昂然と言い放つ女を妻にした、名門出身の無能な男が見出した、唯一の慰安が身の破滅を招くまでを非情に描ききった「無能の情熱」、身代り応募によって入選し、流行作家の虚名を得た男の運命を追求した「文学賞殺人事件」、それらと「暗渠の狼群」「中禅寺湖心中事件」「企業人非人」「殺人花壇」の6編。人生の非情、愛の虚妄を鋭くつく、森村推理の魅力を結晶させた短編群。

穴
講談社文庫
深夜、隣人の不審な行動を目撃した少年の恐怖の体験を、サスペンス豊かに描いた、作者得意の子供を主人公にした表題作「穴」。コートを食堂で取り違えた視覚障害者が、特有の鋭い感受性で名探偵ぶりを発揮する「明るい闇」。ほかに「山のふところに」「幽霊と月夜」「誘拐者たち」「うさぎと豚と人間と」の6編を収録。日常の中の殺意を透明な文体、独得のユーモアの中に鮮かに浮かびあがらせた、傑作ミステリー集。
深夜、隣人の不審な行動を目撃した少年の恐怖の体験を、サスペンス豊に描く著者得意の子どもを主人公にした表題作ほか、「明るい闇」「やまのふところに」「幽霊と月夜」「誘拐者たち」「うさぎと豚と人間と」を収録。

自己発見
講談社文庫
現代の碩学が自由に綴る含蓄深いエッセイ集。偉大な学者であり、芸術にも造詣深い著者が、古典について、自分自身の意識の生いたちについて、現代社会の状況について、思うままに語り提言する。ーー〈人間が忙しく走りまわる文明を、高度の文明だとは思いません〉〈対立するということではなくて、相待つということを、もういっぺん考えなければならぬ〉……人類と社会への熱っぽい提言、また古典への深い思い、生き甲斐論、創造的生き方のすすめ、など、現代を代表する知性による、現代人必読の、含蓄深いエッセイ集。

口笛をふく時
講談社文庫

太閤秀吉(六)
講談社文庫
朝鮮戦役は初戦こそ勝ったが、補給路を絶たれて苦戦を強いられ、膠着状態に陥る。芳しくない戦果を打ちはらうかのように、秀吉は、大々的に吉野山の桜狩を挙行する。付添うのは、粉飾も打算もなく、献身的に彼の世話をし、最近の寵愛を独占する新しい愛妾・なべ。その間、淀君は第二子誕生、後年の秀頼であるが、はたして秀吉の子なのか。伏見城に移った晩年の秀吉を描く。<全8巻>

親不孝のすすめ 青春の独立宣言
講談社文庫
教育について論じるのはご自由。だが、加害者に罪の意識がないのは始末が悪い。“被害者の身にもなってくれ”と悲鳴を上げる高校生諸君に、あえて“パラドックスの真理”でもって答える「親不孝のすすめ」。
教育について、語らぬ者はない。誰れでも容易に手軽に、全員参加で首をつっ込めるのが、教育論議である。論じるのは自由だが、影響力があるから、始末に困る。加害者に罪の意識がないから、悪質だ。被害者の身にもなってくれ、と悲鳴をあげる高校生諸君に、一片の惻隠の情を寄せながら、切実な問題にパラドックスの真理でもって答える「親不孝のすすめ」をおくる。

今朝太郎渡世旅
講談社文庫
奥州の片田舎の上杉藩関村で、水呑百姓として一生を終わるはずだった今朝市は、江戸の商人・信吉のために渡世人・今朝太郎となって、裏街道を歩くことになる。同行するは、デブで醜女だが気立てのよい初体験の相手である飯盛女・おさん、体力も意気地もないイカサマ博奕師の壺振り仙八。奥州街道を江戸へ向って世をはばかる逃避行をする3人の、おもしろおかしい裏街道の道行を描く。奇妙な偶然に翻弄される、快心の異色股旅ユーモア小説。
ブラウン監獄の四季
講談社文庫

魔神の海
講談社文庫
クナシリ(国後)島の青年・セツハヤが狩りから帰ってみると、和人(日本人)によって島の生活は大きく変えられていた。不戦の理想を追うセツハヤは、清純で子じかのような愛するシアヌを失って、民族を守るため立ちあがった……。「なぜ人間は互いに憎しみ合い、殺し合うのか」を問うた力作。日本児童文学者協会賞受賞。

棋士・その世界
講談社文庫
将棋指しが棋士と呼び名が変わっても、勝負に賭ける内実は変らない。想像を絶する驚くべき才能が、激突する。きびしい勝負の末の喜び、悲哀、孤独。一途で誇り高く、しかも心やさしい男の世界。今まで誰も書き得なかったその世界と人間像を、生き生きと、鋭く、暖かく、爽やかに活写した快著。巻末に将棋百科を付す。

娘の中の娘
講談社文庫
父親を裏切り、男と失踪した長女に、複雑な気持を抱いている父親は、次女の桂子にすべての夢をかける。だが、その桂子も父親の意見をきかずに、OLになってしまう。未知の世界は、桂子に新たな目を開かせるのだが……。愛と友情に悩む乙女心と、父親の哀歓を鮮かに描いた傑作長編。

太閤秀吉(五)
講談社文庫
豊臣秀吉は、夭折した嫡子・鶴松にかわって、甥の秀次を後継者にし、関白職と聚楽第を譲る。ところが秀次は、「殺生関白」の風聞を立てた上に、謀反の意ありと秀吉に進言される。秀吉は、やむなく秀次を処刑。秀次の妻妾30人も、刑場の露と消える。4か月後、大明国征服のため、まず朝鮮出陣の大号令が下る。文禄の出兵である。<全8巻>

海音寺潮五郎短篇総集(七)
講談社文庫
歴史小説の第一人者、海音寺潮五郎の短篇80余篇を全8巻に編成。第7巻は、魔術的な剣の妙手松山主水の意気地をつづる「小次郎と武蔵の間」、金山を発見し、南部藩に功績を残した「南部十左衛門」、強盗大名「羽川殿始末記」、千姫救出事件の「坂崎出羽守」、母里太兵衛を描く「名槍日本号」、殺戮乱行に憑かれた「忠直卿行状記」、北条家遺臣の悪業への転落の軌跡を語る「鳶沢甚内聞書」など13篇を収録。

わたしの信州
講談社文庫
画家は東京を離れて、信州へ戻った。そこは、いついつまでも限りなく愛と美を呼びおこす永遠のテーマ。ふるさとの空と大地にはぐくまれた詩情あふれる絵と、熱く切ない思いを綴った原田泰治の精選画文集。これは画家の愛する信州にとどまらず、あなた自身の、なつかしいふるさとの美の風景でもあるのです。