わが子キリスト

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わが子キリスト

ワガコキリスト

講談社文芸文庫

征服地ユダヤの完全支配をもくろむローマ政府顧問官の政治的意図によって作り出された救世主、神の子イエス。顧問官の部下で、キリストの実父だというローマ軍の隊長は、ぬきさしならぬ状況の中でイエスの復活を演じることに……。独特の聖書解釈によって生まれた異色のイエス像を描いた「わが子キリスト」に、中国を舞台とした歴史小説2篇を併録。武田泰淳の政治・歴史観を大胆に映した傑作集。


欲望する<世界>が作り出したイエスの誕生、磔刑、そして復活。

征服地ユダヤの完全支配をもくろむローマ政府顧問官の政治的意図によって作り出された救世主、神の子イエス。顧問官の部下で、キリストの実父だというローマ軍の隊長は、ぬきさしならぬ状況の中でイエスの復活を演じることに……。独特の聖書解釈によって生まれた異色のイエス像を描いた「わが子キリスト」に、中国を舞台とした歴史小説2篇を併録。武田泰淳の政治・歴史観を大胆に映した傑作集。

井口時男
「神の子」を自称するイエスは、政治にも経済にも関心がなかったろう。(中略)純粋たらんとする「精神」は無力である。「復活」がその無力な「精神」の究極の勝利を意味するにしても、(中略)この「復活」は、顧問官と「おれ」とユダとマリアと無数の民衆と、つまりは支配も被支配も政治も経済も肉体もひっくるめたこの地上的なるもののいっさいが、協力・合作して成就させたのである。地上的世界は「精神」を排除するが、しかし、その「精神」の「復活」を希求するのもこの地上的世界にほかならない。これは「精神」をめぐる逆説である。――<「解説」より>


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目次

わが子キリスト
王者と異族の美姫たち
揚州の老虎

書誌情報

紙版

発売日

2005年07月10日

ISBN

9784061984127

判型

A6

価格

定価:1,375円(本体1,250円)

ページ数

240ページ

シリーズ

講談社文芸文庫

初出

講談社文庫『わが子キリスト』(’71年11月刊)を底本としました。本文中明らかな誤植と思われる箇所は正しましたが原則として底本に従いました。

著者紹介

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