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前田利家(下)
マエダトシイエ
- 著: 津本 陽

眼前に迫る死の闇に立向う侍の魂!
戦国の世を生抜いた前田利家の最期!
家康一行が前田屋敷を辞去したのち、利家は利長(長男)を病床へ呼ぶ。傍には右近のほかに誰もいない。利家は布団の下から氷のように磨きすました抜き身の大刀を取りだし、利長にみせていった。「今朝ほど、おのしに心得ておるかやといいしとき、器量を持ちての返答をいたせしならば、すなわち内府に会いて、この場を去らせず斬り殺せしだわ。されどもおのしがいらえは、腑抜けしものなりしゆえ、内府を殺すのをやめしでや。」庭前にはつつじの紅があざやかに陽ざしに映え、蝶が舞っている。利家は割り粥を口にし、酒をすこし飲み、さかんな春の光景を眺めつつ、わが62年の越しかたを思いだす。……――(本文から)
書誌情報
紙版
発売日
1994年12月16日
ISBN
9784062074285
判型
四六
価格
定価:1,602円(本体1,456円)
ページ数
286ページ
初出
北国新聞紙上に『バサラ利家』の題で1993年1月1日から1994年5月5日に発表された作品
著者紹介
著: 津本 陽(ツモト ヨウ)