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真幸くあらば
マサキクアラバ
- 著: 小嵐 九八郎

死刑確定──その日からみんなの心が1つに!
絞首台(バタンコ)の日がすぐそこに。初めて人を愛することを知った若き死刑囚は獄中養母と秘密通信。教誨師、看守、実母も国家に奪われる命の意味を噛みしめる。
淳より
1992年5月1日。
少し急ぎます。
この頃、病的な食欲でかえって疲れています。でも、この短い通信にふさわしくないので、カット。
決して泣きを入れて、気を引こうなどと思いません。今朝の9時頃、8人か9人の靴音が舎房全体にいっせいに轟き、ぎくりとしました。代議士か法務省の偉い人の視察みたいなものでしょう、肝臓が汗を垂らしてちょっぴり小さくなった感じです。だから、急ぎたいのです。
正直いって茜さんの告白は、はじめ驚きました。次に、情けない人間同士という感情がでてきました。そして、いまは、そうやって悶悶とする茜さんがもっと好きになりました。おれの場合、男として女の人を、から、それを含んで、人間が人間へという気持ちが人間へという気持ちです。
聞かせて欲しい。好きになってはいけないのかと。
返事を、早く、早く知りたい。
「茜」より
’92・5・14
いまは答えられないのです。
許して。
書誌情報
紙版
発売日
1998年10月23日
ISBN
9784062094672
判型
四六
価格
定価:1,980円(本体1,800円)
ページ数
326ページ
初出
備考参照