一日 夢の柵

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一日 夢の柵

イチニチユメノサク

文芸(単行本)

生々しい奇妙な現実
人が暮らしてゆくという

日常の内奥に差す光と闇を見つめ、生きることの本質と豊穣を描き切る、傑作小説集。

どこかの広場を2階か3階の窓からでも俯瞰した様子の写真を彼は指差した。曇った午後なのか夕暮れ近くか、沈んだ色調の中を幾人もの人が半ば風に化して流れている。足は映るんですよ。言われて初めて気がついた。どの人も靴のあたりだけははっきり形が見えた。身体の無い生温かな足が敷石の上を一斉に歩いている。そうか、足は残るんだ。思わず膝を叩く気分に見舞われた。一歩踏んでから、身体が前に出る間も足はまだ地面についているんです。長身をやおら動かして彼は歩く身振りを大仰に再現してみせた。いかにも靴だけが後ろに残る動作だった。その時、人間はどこに居るんだろうか。どこに居るんでしょう……。――<「一日」より>

第59回野間文芸賞受賞


書誌情報

紙版

発売日

2006年01月27日

ISBN

9784062131162

判型

A5変型

価格

定価:2,090円(本体1,900円)

ページ数

278ページ

初出

収録作品参照

収録作品

  • 作品名

    夢の柵

    初出

    『文学界』1996年2月号

  • 作品名

    影の家

    初出

    『群像』1996年10月号

  • 作品名

    初出

    『新潮』1998年1月号

  • 作品名

    浅いつきあい

    初出

    『文学界』1998年1月号

  • 作品名

    電車の中で

    初出

    『群像』2001年1月号

  • 作品名

    隣家

    初出

    『新潮』2002年1月号

  • 作品名

    丸の内

    初出

    『群像』2003年1月号

  • 作品名

    記録

    初出

    『新潮』2003年2月号

  • 作品名

    一日

    初出

    『文学界』2004年1月号

  • 作品名

    危うい日

    初出

    『新潮』2004年6月号

  • 作品名

    久介の歳

    初出

    『文学界』2005年2月号

  • 作品名

    要蔵の夜

    初出

    『群像』2005年4月号

著者紹介

既刊・関連作品一覧